『さようなら、コタツ』感想・レビュー・あらすじ|孤独な夜に……

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当記事は中島京子著『さようなら、コタツ』の書評です。

今回ご紹介するのは現実を忘れて小説の世界に没頭したい!そんな気分の時にぴったりな、少し孤独を感じる短編集。

だけどちゃんと、救いのある結末が用意されていますのでご安心を。なんだかちょっぴり寂しさを持て余してしまった、休日前の夜のお供におすすめです。

あなたにとっての、良き一冊となりますように。

目次

『さようなら、コタツ』あらすじ

『さようなら、コタツ』あらすじ

15年ぶりに、しかも誕生日に、部屋に恋人未満の男を招くことになった36歳の由紀子。有休を取り、ベッドの到着を待ち、料理を作って待つが、肝心の山田伸夫が…来ない!

表題作ほか、新入りが脱走した相撲部屋の一夜を描く「八十畳」。やもめ暮らしの大叔父が住む、木造平屋に残る家族の記憶をひもとく「私は彼らのやさしい声を聞く」など、〈7つのへやのなか〉を、卓越したユーモアで描く傑作短篇集。

『さようなら、コタツ』中島京子著 集英社文庫出版(2007/10/19)より引用

部屋」というプライベートな場所で過ごしている、彼らや彼女の姿がとてもリアルで親近感を覚えました。

1話20〜40ページ足らずの短いストーリーですので15分程度でサクサク読めますが、心理描写がとてもうまい作家さんですので、文章を楽しみながらじっくり読むのもオススメです。

全7話収録されていますので、きっとお気に入りのストーリー、お気に入りの部屋が見つかるはずです。

孤独な夜に、別の誰かの人生をのぞき見るような感覚で、ぜひ手にとってみてください。

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『さようなら、コタツ』の感想・レビュー

『さようなら、コタツ』の感想・レビュー

読み終わって感じたのは、ドラマを見ていたような感覚

目は文字を追っているはずなのに、それぞれの部屋の間取りや家具の色まで、鮮やかに脳内再生されていく面白さがありました。

ちょっとした描写から想像できるインテリアにも、そこで暮らしている主人公の性格が投影されていて、世界観の表現がお見事でした。

基本的に主人公たちは、自分の部屋で日々の生活や感情の処理に追われています。その様子がリアルで、孤独で、今部屋で過ごしている自分自身さえもこの小説に出てきてしまいそうな、そんなリアルにいそうな人たちの描き方がとってもお上手です。

3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。

POINT.1 みんな部屋で過ごしている

だいたいの小説って、「主人公が外にいる状態」でストーリーが進むと思うのですが、この小説ではほとんどの時間を、家の中で過ごしています。

そのせいか、それぞれの主人公の「素」の部分がありのままに表現されていて、短いストーリーの中でも親近感を覚えます。作者の中島京子さんもまえがきでこう描いています。

この短編集には、老人が暮らす部屋も、子どものいる家も、独身女性のマンションも、結婚間近の男が住むアパートも出てくる。

部屋の数だけ人生はある。だからこの短編集の裏タイトルは、 へやのなか である。

『さようなら、コタツ』中島京子著 集英社文庫出版(2007/10/19)より引用

家で1人、物思いにふける主人公に共感して「自分だけじゃないんだな」と、気持ちを代弁してもらえたような気がして、なんだか安心します。

POINT2. 行間から想像させる表現力がすごい!

文字から想像させる」能力って、作家さんの腕にかかっていると思うのですが、中島京子さんはその能力がピカイチな方だと思っています。

例えば、表題作の「さようなら、コタツ」の中で、登場人物が一気に喋りまくるシーンがあるのですが、そのシーンなんと、1ページほぼほぼ読点、改行なしです……!

多少読みにくいのですが(笑)その登場人物は不器用で口ベタな性格なので、あえて読みにくくすることでむしろその「キャラクターらしさ」が際立っていて、お見事でした。

他にも、気持ちがうまく表現できないシーンであえて読点を増やしたりと、主人公たちの感情を行間から感じさせる技にも注目です。

POINT3. ラストが巧み

どのストーリーもはっきりとしたオチはなく「余韻」を残して終わります。

この本を閉じた後も、主人公たちの日常は続いていく、あくまで人生のほんの1シーンを切り抜いたに過ぎない。そんな終わり方に、想像力をかき立てられます。

この後、主人公はどんな暮らしをしたのかな……読み終わった後に、そんなことを想像しながらストーリーの余韻に浸れる小説です。

『さようなら、コタツ』を読んだ感想・まとめ

サクッと1話ずつ寝る前に読むもよし。

行間からにじみ出る心理描写を、夜更かししながらじっくり楽しむもよし。

読み終わった後には、たまにはこんな静かな夜もいいな…と心が落ち着く1冊です。ぜひ手にとってみてください。

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この記事を書いた人

これまでに何百冊もの小説を読んできました。その中から特に心に残った一冊を、少しずつ書評としてまとめています。

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