『走るジイサン』感想・レビュー・あらすじ|クスッとわらって、ほっこりしたい時に

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当記事は池永陽著『走るジイサン』の書評です。

主人公は、69歳のおじいさん。

老いをテーマにした小説」と聞くと、なんだか重たい印象を持つかもしれませんが、笑いあり、涙ありのヒューマンストーリーですのでご安心を。

170ページほどの短いお話ですので一気読みするもよし、寝る前に少しずつ読み進めるもよし。

日頃なかなか知ることのない老後のリアルな日常を体験できる、またとないチャンスです。少し立ち止まって、老後について考えてみる良い機会かもしれません。

あなたにとっての、良き一冊となりますように。

目次

『走るジイサン』あらすじ

『走るジイサン』あらすじ

頭の上に猿がいる。話しかければクーと鳴き、からかえば一人前に怒りもする。お前はいったい何者だ——。近所の仲間と茶飲み話をするだけの平凡な老後をおくっていた作次。だが、突然あらわれた猿との奇妙な「共同生活」がはじまる。きっかけは、同居する嫁にほのかな恋情を抱いたことだった……。老いのやるせなさ、そして生の哀しみと可笑しさを描く、第11回小説すばる新人賞受賞作品。

Amazonより引用

頭の上に猿……?とても不思議な設定ですが、この猿は主人公・作次さんの心情が投影されている大事なキーマンならぬキーモンキー(?)です。

老後というテーマを扱いながらも、おじいさんたちのクスリと笑えるシュールな会話に「なんだ、私たちとそんなに変わらないんだな」と親近感が湧きますし、あたたかい気持ちになれるはず。

将来に漠然とした不安を感じている……だけど、ゆっくり考える時間なんてない。そんな忙しいあなたこそ「老後のお試し体験」として、気軽に手に取ってみて下さい。

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『走るジイサン』の感想・レビュー

『走るジイサン』の感想・レビュー

笑いあり、涙ありの生き方について考えさせられる小説でした。

決して他人事ではなく、いつか必ず自分にも訪れる老いとの向き合い方に、この世代はこんなふうに感じるのか、と発見がたくさんありました。

若い人たちへの少しの憤りと遠慮、プライドと羞恥心。自分の両親や、祖父母側の気持ちを考えるきっかけにもなるかもしれません。未体験のことを擬似体験できるのは、読書の良いところですね。

頭の上の猿から感じられる、作次さんの心情の変化にも注目です。

3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。

POINT1. 主人公は頭の上に猿がいる…69歳のおじいさん

なんだかめちゃめちゃシュールな設定ですよね。まず冒頭の書き出しがこれです。

頭頂部だ。頭の上に猿がいる。いくぶん哲学的ともいえる澄ました顔をして確かにちょこんとのっている。

『走るジイサン』 池永陽 集英社文庫出版 (2003/1/17)より引用

でもこれ、コメディでもなんでもありません。読みすすめていくとこの猿には実は、メッセージ性が込められていることがわかってきます。

69歳という年齢も相まって自分はボケたのか、おかしくなったのか?……とおびえる主人公の作次さん。

この物語全体に漂う「老後の漠然とした孤独感」から、老いというのは自分の感覚を信じられなくなっていく不安がつきまとうんだなと実感しました。

この猿との付き合い方、作次さんの気持ちの変化にも注目です。

POINT2. 嫁に対する想いと関係性の変化にほっこり

ひとり息子が結婚し、息子夫婦と同居し始めた作次さん。

嫁の態度はそっけなく、同居してからは自分の家がよその家のように感じられ、冷蔵庫の卵1つ食べるのにも悩むような肩身のせまい日々を送っています。

それなのに、なぜか気になる。かまってやりたい、好かれたい。そんな自分の感情との折り合いの付け方も、非常にリアリティを感じます。

作者の池永陽さんはこの作品を48歳の時に発表されていますが、よくここまで老後をリアルに描けるな……と感服しました。

POINT3. 矜持を持って生きている姿がかっこいい

行きつけの喫茶店で、同世代の仲間たちとたわいもない話をするのが日課の作次さん。

老いに抗おうとしたり、受け入れようとしたりと、戸惑いながら必死に「老人」をやっている彼らの姿に胸を打たれます。それでもなぜか、閉塞感よりもみずみずしさを感じるのは、作次さんの矜持を持って生きている姿がかっこいいから。

迷いながらも、人として大事なことを見失わないように、時には周りの人たちにアドバイスしながら、自らも律しているような姿は人としてかっこいいなと思えました。

自分がこの歳になった時に、もう1度読み返して参考にしたいなと思えるエピソードが満載です。

『走るジイサン』を読んだ感想・まとめ

普段はなかなか考えることのない、老後の在り方

読み終わった時に、こんな人間でありたいな…と襟を正せるような、素敵な小説でした。

「老い」という決して明るい題材ではありませんが、立ち止まって自分のことを見直す良いきっかけになる、そんな作品です。

老後への不安なイメージを持ったあなたも、読み終わる頃には歳を取るのも悪くないな、と前向きな気持ちになれると思います。

ぜひ手にとってみてください。

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