『探偵伯爵と僕』感想・レビュー・あらすじ|ちょっと変わった小説が読みたい時に

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当記事は森博嗣著『探偵伯爵と僕』の書評です。

今回は少し変わったミステリー小説をご紹介します。

小学生の視点でストーリーが進むのですが、タイトルの通り、物語には小学生の「僕」と探偵伯爵が登場します。

「探偵伯爵」とは……?そもそも日本人なの……?小説のタイトルからして不思議ですよね。「ちょっと変わった小説が読みたいな」というときにぴったりです。

あなたにとっての、良き一冊となりますように。

目次

『探偵伯爵と僕』とは?

探偵伯爵と僕』は、2004年に講談社ミステリーランドより出版された森博嗣のミステリー小説。

最後に発覚する事実により物語の印象がガラリと変わる、叙述トリックに注目。

『探偵伯爵と僕』あらすじ

『探偵伯爵と僕』あらすじ

もう少しで夏休み。新太は公園で、真っ黒な服を着た不思議なおじさんと話をする。それが、ちょっと変わった探偵伯爵との出逢いだった。夏祭りの日、親友のハリィが行方不明になり、その数日後、また友達がさらわれた。新太にも忍び寄る犯人。残されたトランプの意味は?探偵伯爵と新太の追跡が始まる。

『探偵伯爵と僕』森博嗣著 講談社出版 (2008/11/14)より引用

行方不明になった友だちを伯爵と2人で捜索していくストーリー。

森博嗣さんの作品が初めての方は、独特のキャラクター設定とセリフのやり取りに驚くかもしれません。

しかし読み進めるうちに、不思議と登場人物に親近感がわいてきて、そうなるともう「森ワールド」の虜になること間違いなしです。

ぜひ手にとってみてください。

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『探偵伯爵と僕』感想・レビュー

『探偵伯爵と僕』感想・レビュー

読了後の感想は、ただただ驚きの一言です。

序盤の、ほのぼのとした日記風の書き出しからは想像もできない結末に「作者にしてやられた」感があり痛快でした。

結末を知ることで物語の雰囲気ががらっと変わるので、もう1度初めから読み返したくなることでしょう。ミステリーにはどんでん返し、叙述トリックなどいろいろなパターンがありますよね。しかしこの作品は、そのどれともすこし違った裏切り方をしてきます。

小学生の「僕」と正体不明の「伯爵」という謎の設定ですが、不思議とどんどんストーリーに引き込まれていきました。ミステリーなのでシリアスな内容ではあるのですが、ヘンテコだけど妙に確信をついている2人のやり取りにも注目です。

3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。

POINT1. “伯爵”の人柄に注目

舞台は現代の日本です。え?日本に伯爵なんていませんよね……。しかも「僕」と伯爵が初めて出会ったシーンでは、伯爵は背広を着てブランコに乗っています。いったい何者なんでしょうか。

ひょんなことから「僕」と伯爵は、とある捜査をすることになります。捜査のなかで伯爵の洞察力、推理力に「なるほど!さすが探偵(?)」と唸るシーンは何度かあるのですが、それ以上にハッとさせられたのは「僕」との接し方。

2人は小学生と大人なのですが、伯爵は「僕」のことを決して子ども扱いせず対等に向き合います

子どもって、実はけっこう大人がつく嘘や建前を見抜いているもの。誤魔化したりせず実直な伯爵の言動に、だんだん打ち解けていく「僕」の気持ちがわかるような気がします。「僕」の疑問を適当に流さず向き合う伯爵の姿勢には、見習うべきものがありました。

歳の離れた2人が対等に付き合おうとするからこそ、チグハグになる会話にもなんだかホッコリします。

POINT2. 作者の“本質を見抜く視点”がおもしろい

私が森博嗣さんにハマった最大の理由は「物事の本質をついた考え方」が好きだから。

これまでいろいろな作家さんの小説を読んできましたが、森さんの描く登場人物は「思い込みを持たずに客観的に物事を捉えようとする」人物が多いように思います。

今回の主人公である「僕」も例外ではなく、小学生ながら筋道たてて物事を捉えていて考えさせられる描写がたくさんありました。

今回の作品で特に印象的だったのはこちら。

子供にはわからないからって大人が口にするもののほとんどは、子供でも充分に理解できることばかりなのだ。それよりも、学校で習う社会科の内容の方が、子供ではわからないと思う。経済とか政治とか、なんであんなに複雑なのかわからない。それよりは、人間がどう考えるか、ということの方がずっと身近なのに、どういうわけか、子供には教えてもらえないことが多いのだ。

探偵伯爵と僕』森博嗣著 講談社出版 (2008/11/14)より引用

ハッとしませんか?本当にそのとおりだなと。人間がどう考えるのか。なんて、教えるのはとてもむずかしいことですが、生きていくうえで絶対に知っておくべきことですよね。

こういう確かな描写が多いからこそ、たまに垣間見える感情の描写に心を動かされるのです。

POINT3. 衝撃的な結末に注目!

小学生の視点でストーリーが進むため、序盤はほとんど情報がありません。なんだか物語全体の雰囲気もほのぼのとしていて「この調子で本当に犯人にたどり着けるのかな?」と読んでいて不安にかられるほどです。

ですが、物語の最後に明かされる事実により「小学生の視点にした理由」がジワジワ効いてきます。まだ小学生なので、大人の気持ちを推しはかる能力がやや未熟なのですが、だからこそ救われたシーンがたくさんあることに気づきます。

このストーリーの語り手がもし大人であったなら、物語全体の雰囲気ががらっと変わり、私はつらくて最後まで読むことができなかったかもしれません。

読み終わってから「僕」の気持ちを想像すると、複雑な気持ちになりますが、森さんの「トリック」にさすがだな、と恐れ入りました。

『探偵伯爵と僕』の作者について

探偵伯爵と僕』の著者である森博嗣さんは、大学工学部の元・助教授という変わった経歴の持ち主。

ジャンルではSF・ミステリーが多く、その経歴を活かした作風は「理系ミステリー」とも呼ばれています。

ほかの作品が気になる方は、こちらの記事もチェックしてみてください。

『探偵伯爵と僕』を読んだ感想・まとめ

友だちの行方は果たして……?スリリングな展開はミステリーならではですが、それとは裏腹に忘れてしまった「子どもの視点」をあらためて思い出させてくれる、そんな小説です。

今まで読んだことのないジャンルに挑戦したい。ちょっと変わった小説が読みたい。そんな時にいつもと一味違う読書体験はいかがでしょうか?

ぜひ手にとってみてください。

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この記事を書いた人

これまでに何百冊もの小説を読んできました。その中から特に心に残った一冊を、少しずつ書評としてまとめています。

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