『夜の光』感想・レビュー・あらすじ|あの頃に思いを馳せる

『夜の光』感想・レビュー・あらすじ|アオハル、再び。
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当記事は坂木司著『夜の光』の書評です。

今回ご紹介する小説は、青春真っ只中の高校生4人が主人公のお話。

今思い返すとまぶしいのに、あの頃感じていた鬱窟とした気持ちがよみがえってきて「あぁ、わかるなぁ。懐かしいなぁ。」と目を細めながら読み進めました。

今まさに現役の学生さんも、大人になったあなたにも読んでほしい、甘酸っぱいけど胸がチクリと痛む青春小説です。

あなたにとっての、良き一冊となりますように。

目次

『夜の光』あらすじ

『夜の光』あらすじ

約束は交わさない。別れは引きずらない。大事なのは、自分に課せられた任務を遂行すること。正体を隠しながら送る生活の中、出会う特別な仲間たち。天文部での活動を隠れ蓑に、今日も彼らは夜を駆ける。ゆるい部活、ぬるい顧問、クールな関係。ただ、手に持ったコーヒーだけが熱く、濃い。未来というミッションを胸に、戦場で戦うスパイたちの活躍を描く。オフビートな青春小説。

『夜の光』坂木司著 新潮文庫出版 (2011/9/1)より引用

廃部寸前の天文部に集まった4人組。この4人がギャルあり、優等生あり、お調子者あり……と、見事にタイプがバラバラで。

そんなバラバラな4人がひょんなことから始めた「スパイごっこ」をきっかけに絆を深めていく、高校最後のひと夏の物語。

各章ごとに語り手が変わるスタイルで、4人それぞれの視点が楽しめます。一緒にいるときとはまた違った一面や、みんなには言えない心のうち。このお年ごろ特有の、漠然としたモヤモヤ感がみずみずしく描かれています。

それぞれタイプの違う男女が4人登場しますので、きっとあなたも過去の自分に重ねあわせて共感すること間違いなし。

ちょっぴり恥ずかしいけれど、たまにはあの頃の未熟な自分を思い返してみませんか?自分をふり返る、いいきっかけになるかもしれません。

ぜひ手に取ってみてください。

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『夜の光』感想・レビュー

『夜の光』感想・レビュー

早く大人になりたい、自由になりたい。そんな感情ばかりが募っていく。
読んでいくうち、「あの当時」のそんな焦燥感を思い出しました。

それぞれの息苦しさを抱えた天文部の4人はタイプもバラバラで、一見共通点はないように見えます。

それゆえ3年生になるまで特に仲良くなることもなかったわけですが、ひょんなことから距離が縮まり、お互いの心の痛みを感じ取れるようになる過程は、読んでいてとても胸が温かくなりました。

全然違うタイプなのに友達になれるのって、学生時代ならではですよね。でも、弱さを見せることで関係性が深まっていく過程は、大人になってからも続くもの。

進歩していないように思えて、イライラしていたあの時期に学んだ人との関わり方って、案外大人になってから活きるものなんだな、としみじみ感じました。

3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。

POINT1. チグハグな4人の絆を深めたもの

本書は日本の高校生のお話ですが、主人公の4人は「スパイごっこ」と称してお互いをコードネームで呼び合い、本名はほとんど出てきません。

ギャル、優等生、ムードメーカー……。クラスも別々。これだけバラバラな4人がなぜ、絆を深められたのか。それはこの「スパイごっこ」がキーになっていると、私は思います。

みんな表面上はいわゆる「普通の高校生」ですが、根底にはモヤモヤを抱えていて。自分ではない架空の誰かになることで、モヤモヤをやり過ごし、一時現実から逃れられる。そんな逃げ場所が必要で、共有できる仲間がいる。

そんな関係性に、救われていたのかもしれませんね。

POINT2. 青春×ミステリー

この小説、ふつうの青春小説と思って読み進めるとびっくり。実はミステリー要素が隠されているのです。

全5章からなるストーリー構成なのですが、各章にそれぞれちょっとしたミステリー要素があって、天文部のメンバーたちが推理し、解決するシーンが描かれています。

にも関わらず、その推理の正否がはっきりと描かれることはなく「たぶん、こうだったんだろう」で終わっているのもポイントで、モヤモヤを抱えながら表面上はクールにふるまう彼らの関係性とリンクしているように感じました。

だてにスパイごっこをしているだけありますね。

POINT3. 友情とは?

仲のいい友だち同士って、お互いのことはなんでも知っていて、共有し合う。そんなイメージがありますよね。

もちろんそんな関係性も素敵ですが、彼らの友情はすこし違うようです。

この4人はお互い、悩みを相談し合ったり、気持ちをさらけ出すことはありません。なのに「星の観測会」と称して4人で集まると、不思議とお互いの存在に心が救われているのが伝わってきます。

詮索せずに、お互いの痛みや弱い部分を察するだけ。ほんの少しの言葉でなぐさめあうだけ。

この関係性に、すべてをさらけ出すことが友情とはかぎらない。相手の気持ちを慮ることが出来て、居心地の良い関係性が築ける。それが本当の友だちなんだと彼らに教えてもらいました。

『夜の光』感想・まとめ

大人になりたいと願うのに、ひとりでは何もできない自分への苛立ちと、失望感。

その当時は、こんな鬱窟とした日々を温かい気持ちで振り返る日がくるなんて、想像もしていませんでした。ですが、彼らの日常を読み解くことで、あの日々は自分にとってかけがえのない時間だった。とあらためて気づかせてもらえました。

あなたがもし、今まさにモヤモヤとした日々を送っているのであれば、「そんなこともあったな」と笑って振り返られる日がくることを願いながら、彼らの世界に逃避行してみるのはいかがでしょうか。

ぜひ手にとってみてください。

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この記事を書いた人

これまでに何百冊もの小説を読んできました。その中から特に心に残った一冊を、少しずつ書評としてまとめています。

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