『私が語りはじめた彼は』感想・レビュー・あらすじ|人の心の闇にせまる

『私が語りはじめた彼は』感想・レビュー・あらすじ|人の心の闇にせまる
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新潮社
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当記事は三浦しをん著『私が語りはじめた彼は』の書評です。

今回ご紹介する作品は、忘れられない人に人生を捕らえられ、心の中に闇を抱えながら生きていく人たちを描いたミステリー小説。

一見悲しい内容ですが、人の心の裡に触れることで、自身の気持ちのデトックスになるかもしれません。

人間関係に疲れてしまった時、行き止まりにいるような気持ちの時に、そっとページを捲ってみてください。

あなたにとっての、良き一冊となりますように。

目次

『私が語りはじめた彼は』とは?

私が語りはじめた彼は』は、2004年新潮社より出版された三浦しをんの小説。

心温まるヒューマン系の作品を多く執筆している彼女にはめずらしく、ミステリー要素を含んだ作品となっています。

『私が語りはじめた彼は』あらすじ

『私が語りはじめた彼は』あらすじ

私は、彼の何を知っているというのか?彼は私に何を求めていたのだろう? 大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘——それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。だが、それは愛というようなものだったのか……。「私」は、彼の中に何を見ていたのか。迷える男女の人恋しい孤独をみつめて、恋愛関係、家族関係の危うさをあぶりだす、著者会心の連作長編。

『私が語りはじめた彼は』三浦しをん著 新潮文庫出版 (2007/8/1)より引用

なんと、タイトルの「彼」は出てきません。

「彼」の妻、愛人、子供、部下……さまざまな視点から語られる思い出、遺恨。人はなぜ、人を愛し、憎むのか。それぞれの心の闇を描いた連作ミステリー

当の本人が回想シーンでしか登場しないというのがポイント。視点が変わることによって一新される「彼」のイメージに翻弄されること間違いなし。

だんだんと明らかになっていく事実にも注目です。

ちょっぴり怖いけど、続きが気になってしまう。人間の底を見たような気にさせられる一風変わったミステリー

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『私が語りはじめた彼は』感想・レビュー

『私が語りはじめた彼は』感想・レビュー

思うままに生きた「彼」の周りで翻弄され、不幸になっていく周りの人たちの様子にゾッとするやら、悲しいやら……。

人を裏切り、裏切られると、やはり双方どちらも心にダメージを受けるものなのだなと改めて実感しました。

語り手がつぎつぎ変わることで、それぞれが抱えた心の闇がどんどん明らかになり読者も毒気に当てられたような気持ちになります。

なのにページを捲る手が止められない。読了後、思わずもう一周読みたくなる新感覚ミステリー

3つのポイントに整理して、感想をお伝えします。

POINT1. さまざまな視点から見る「彼」

タイトルの「彼」とは、大学教授の男なのですが、面白いことに彼自身はほとんど登場しません。

女性に奔放であった「彼」に振り回され、心に闇を持ち、傷を追ってしまった周囲の人々が順番に語り手を務めるという、珍しい連作スタイルなのです。

妻、子供、愛人、部下……それぞれの感情と、その後の人生を描いた作品なのですが、裏切りによって感じた心の傷は、これほど人の人生に影響を与えてしまうものなんだなとゾッとしてしまいました。

結局人の本当の気持ちというのは、誰にも分からないもの。ですので一見消化不良に終わるのですが、人にはいろいろな面がある。ということを改めて考えさせられる作品です。

POINT2. 新感覚ミステリー

この作品をジャンル分けするとしたら、ミステリーでしょうか。

事件が起きて解決する、という流れでは決してないのですが、さまざまな人の視点から語られることで、少しづつ明らかになっていく事実。それによってまた見方が変わっていく……という様相はミステリーそのものではないでしょうか。

語り手が変わるたびに、読者の私たちもどこに感情を置いたらいいのか、誰に肩入れしたらいいのかわからなくなっていく感覚。

そして、一見幸せそうに見えた人物も実は心に闇を抱えていて、どんどん狂気をはらんでいく恐怖感。

これこそが、「彼」に気持ちを弄ばれた語り手たちの気持ちなんだなと気づく時、より共感を持って読み進められるようになりました。

POINT3. 描写力

作者・三浦しをんさんの作品は他にも多数読んでいるのですが、特徴として、読者に「感じさせる」のが上手い作家さんだなと私は思います。

1から10まで全て明かすのではなく、ほんのりと匂わせてくるエッセンスに気づいた時の恐怖感。怖いのにクセになるあのゾクゾク感がたまりません。

結局わからないままなんだけど、なんか怖い。という感情を読者の心に残していく、そんなミステリー小説です。

謎解きは一切ありませんが、一風変わったミステリーが読みたい、ドキドキしたい。そんな時におすすめです。

『私が語りはじめた彼は』著者について

『私が語りはじめた彼は』の著者である三浦しをんさんは、1976年東京生まれの小説家です。

2000年『格闘する者に◯』でデビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、12年『舟を編む』で本屋大賞を受賞。

人物描写に定評があり、ヒューマン系の小説を多数執筆されています。映画化された作品も多く、エンターテイメント性のある作品から、恋愛、お仕事小説まで幅広いジャンルの作品を生み出されているのも特徴です。

他の作品も気になる方は、三浦しをんさんのおすすめ10選も合わせてチェックしてみてください。

『私が語りはじめた彼は』感想・まとめ

今回は、人の心の裡にせまる新感覚ミステリーをご紹介しました。

ちょっぴり疲れてしまった時、人間関係に悩んでいる時にあえて人の心の闇にせまることで、自分自身の気持ちのデトックスになるかもしれません。

ぜひ手にとってみてください。

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この記事を書いた人

これまでに何百冊もの小説を読んできました。その中から特に心に残った一冊を、少しずつ書評としてまとめています。

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