『くまちゃん』感想・レビュー・あらすじ|失恋から学ぶ

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当記事は角田光代著『くまちゃん』の書評です。

今回ご紹介するのは、失恋にまつわる連作短編集
何が「連作」なのか?そう、ズバリ「失恋」です。登場人物みんな、失恋していきます。

そして面白いのが、最初に登場する男女から元カノ、元カレ……という具合に、どんどん失恋の輪が繋がっていくのです。

自分を振り返るきっかけにするもよし。昔付き合った人との思い出に浸るもよし。

甘酸っぱい失恋ストーリーから、なにか学びがあるかもしれません。

あなたにとっての、良き一冊となりますように。

目次

『くまちゃん』とは?

くまちゃん』は、2009年新潮社より出版された角田光代の恋愛短編集。

元カレ、元カノ……と失恋が連鎖していく、究極の「ふられ」小説

『くまちゃん』あらすじ

『くまちゃん』あらすじ

風変わりなくまの絵柄の服に身を包む、芸術家気取りの英之。人生最大級の偶然に賭け、憧れのバンドマンに接近したゆりえ。舞台女優の夢を捨て、有望画家との結婚を狙う希麻子。ぱっとしない毎日が一変しそうな期待に、彼らはさっそく、身近な恋を整理しはじめるが……。ふる/ふられる、でつながる男女の輪に、学生以上・社会人未満の揺れる心を映した共感度抜群の「ふられ」小説。

『くまちゃん』角田光代 新潮文庫出版 (2011/11/1)より引用

失ってから気づく大切さ、きらめき。
元カレ、その元カノ、そのまた元カレ……過去の恋を振り返り、大切なことに気づいたり、ほんのちょっぴり成長したりする男女の姿をみずみずしく綴った究極の「ふられ」小説

連作になっているので、同じ人物が別のストーリーに登場することも。
1話50ページほどの中編が7つ収録されているので、それぞれの恋の始まりから終わりまでがきちんと綴られています。

友人の失恋話を聞くつもりで、ページを捲ってみてください。
きっと、あなたの心にもズキンとくる「失恋ストーリー」があるはずです。

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『くまちゃん』感想・レビュー

『くまちゃん』感想・レビュー

ことごとく失恋していく男女。誰もうまくいっていないのに、それもまたなんだか切なくていい。

連作なので、次のストーリーではまた別の人と付き合う姿が見られるのですが、付き合う人が変わることで、まるで別の人みたいになっていく姿もなんだかリアルで。

元カレの現在の姿を見てしまったような、そんな気まずさを味わいました。

7つの短編が収録されているので、きっとあなたにリンクするストーリーもあるのではないでしょうか。

過去の恋を重ね合わせるも良し、次の恋に備えて勉強するも良し

3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。

POINT1. ことごとく失恋が連鎖していく連作短編集

本書の最大のポイントは元カレ、元カノ……「元恋人」という繋がりでストーリーが展開していくところ。ありそうでなかった設定ですよね。

出会いも別れのきっかけも、付き合った期間もバラバラなそれぞれのカップル。

唯一の共通点が「失恋」というなんとも悲しい設定なのですが、関係性の築き方にその時置かれている状況が反映されていて、それぞれの「らしさ」を感じました。

7話のストーリーが収録されているので、それぞれの距離感、関係性から学ぶことがたくさんあり、自分を見つめ直すきっかけをくれる1冊です。

POINT2. 相手が変われば、人も変わる

連作短編集の強み、それは1人の人物をさまざまな視点から見られる。ということではないでしょうか。

付き合う人が変われば別人のように見えたり、前の人の時には見えなかった一面が見えたり……そんな風に相手を通して自分自信を模索していく姿が、なんだかリアルでいいなと感じました。

人間って1つの面だけじゃないですし、登場する男女は20代前半〜30代後半の、ちょうど大人へと成長していき、恋愛経験も重ねる世代。

少しずつ変化していく恋愛観と、ライフスタイル。付き合う相手も、その時々にフィットした人と惹かれ合いますよね。

きっとあなたに似たタイプも登場すると思います。自分がどんなタイプで、どんな関係性が理想なのか、人との付き合い方を見つめ直すきっかけになるかもしれません。

POINT3. 描写がいい

私は、著者の角田光代さんの描く文章がとても好きです。

失恋した時の心が痛い感じも、振り返って気持ちの整理をつける時も、言葉のチョイスがなんかいいんですよね。

「やりたい仕事もわかんなくて、ただ日銭を稼ぐように仕事して、そういうつまんない毎日をさ、好きになった男が救ってくれると思ってたんだ。(中略)私の毎日はこんなにちんまりしててつまんないけど、でも私の男は何ごとか成した人なんだもんね、っていうか。それ、すっごく間違ってるって、突然わかったの。私のつまんなさは私のものだし、私は私以上にはなれないんだって、頭じゃなくて、なんていうの、もう全身でびんびんわかったの。」

『くまちゃん』角田光代 新潮文庫出版 (2011/11/1)より引用

なんだか、友人の話を聞いているような気持ちになってきませんか?
それでいて、妙に納得させられるというか、ストンと腑に落ちるというか。

あなたも、ハッとさせられる1行が見つかるかもしれません。

『くまちゃん』の著者について

くまちゃん』の著者である角田光代さんは、日本の小説家、児童文学作家、翻訳家。

数々の文学賞を受賞しており、現在は選考委員を務める事も多い。

心の傷や悲しみの描写に定評があり、映画化されている作品も多数。

『くまちゃん』感想・まとめ

今回は、究極の失恋小説をご紹介しました。

悲しい出来事ですし、できればもう経験したくない事ですが、相手を通して自分でも気づいていなかった部分を知れたり、成長できたことは事実。

でも、実際に体験するのはやはりツラいですから、本の中の人物たちから学ぶべきところは吸収したいものですね。

ことごとく失恋していく彼らから、自身を見つめ直すきっかけがもらえるかもしれません。
ぜひ手にとってみてください。

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