『とっぴんぱらりの風太郎』感想・レビュー・あらすじ|脱力系忍者の心得

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当記事は万城目学著『とっぴんぱらりの風太郎』の書評です。

今回ご紹介する物語の主人公は忍者。

そう、あの忍者です。
身のこなしがすばやくて、壁とかも登れちゃって、スマートに任務をこなすイメージがありますよね。

ですが本書の主人公は、およそ忍者のイメージとはほど遠く、おそらく忍者史上1番パッとしない脱力系。(笑)

戦国時代末期を描いた歴史小説ですが、現代の若者っぽい主人公のおかげで、戦国時代の緊張感がいい感じに中和されています。

読みやすいのに、最後はじわりと胸をえぐられる新感覚の歴史小説。

あなたにとっての、良き一冊となりますように。

目次

『とっぴんぱらりの風太郎』あらすじ

『とっぴんぱらりの風太郎』あらすじ

天下は豊臣から徳川へ。度重なる不運の末、あえなく伊賀を追い出され、京でぼんくらな日々を送る〝ニート忍者〟風太郎。その運命は一個の「ひょうたん」との出会いを経て、大きくうねり始める。時代の波に呑みこまれる風太郎の行く先に漂う、ふたたびの戦乱の気配。めくるめく奇想の忍び絵巻は、大坂の陣へと突入する!

『とっぴんぱらりの風太郎』万城目学著 文春文庫出版 (2016/9/10)より引用

時は戦国時代から太平・江戸の世へ。忍者の「風太郎」は仕事をしくじって伊賀にいられなくなってしまう。

時代の流れも手伝って、忍者としての仕事もなくなり名前通り「プータロー」になってしまった風太郎。そんな彼の運命を、1つのひょうたんが変えていく……。時代の狭間を生きた忍びの物語。

「歴史小説」と聞くと、読み慣れていない人にはなんとなく堅苦しいイメージがあるかと思います。

でもこの作品なら大丈夫。歴史の知識がなくても、ストーリーを追うことでその当時の世相が伝わってきますし、言葉も現代語訳なのでご安心を。

著者・万城目学さんは、歴史とファンタジーを融合させた作品が多く、本書ともつながりのある『プリンセス・トヨトミ』や『鴨川ホルモー』など、映画化、映像化している作品も多数。私にとっては、苦手意識のあった歴史にハマるきっかけをくれた作家さんです。

歴史小説の入門書として、気軽に手に取ってみてください。

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『とっぴんぱらりの風太郎』感想・レビュー

『とっぴんぱらりの風太郎』感想・レビュー

胸がえぐられる。読了後、ふーっ……と天を仰いでしまうような胸苦しさを感じました。

上下2巻なのですが、序盤では緊張感に欠ける日々を送り、こんなやつ友だちにいるいる。という親近感まで感じていた風太郎が、下巻では再び忍びとして命を受け、抗えない大きな流れのなかで彼の「真剣」を見せつけられたときの動揺。

同じクラスで一緒にバカやってた友だちが、受験や就職のために頑張りだしたのを見て急に焦る、取り残されたような寂しさ。そんな感覚に近いものがありました。

私はこの本を読むまでは、当時と現代の価値観がちがうので歴史小説はなかなか感情移入がしにくいな。と思っていたので、こんなに共感できる主人公に出会えて、心を揺さぶられて驚いた気持ちを、今でもよく覚えています。

3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。

POINT1. 忍者なのに脱力系

主人公・風太郎(ぷーたろー)の最大の特徴は、忍者なのにいい感じに脱力感があって、現代の若者っぽいところ。名前がもう、間が抜けてますもんね(笑)

忍者が主人公と聞くと、選ばれしすごい人なのかな……というイメージが湧くかと思うのですが、風太郎はいまいちパッとしません。
彼がどれだけパッとしないかは、物語の書き出しにも現れています。

そもそもが、こんなはずじゃなかった。
何がどう間違って、こうもにっちもさっちもいかぬ羽目に陥ってしまったのか。あまりのどうしようもなさに、自然と笑いがこみ上げてくる。

『とっぴんぱらりの風太郎 上』万城目学著 文春文庫出版 (2016/9/10)より引用

なんだかもうすでに、ダメそう(笑)

だけど、だからこそ人間くさくて共感できるんですよね。この時代の人の描かれ方って、みんな度胸があって武勇伝とかも持ってて「命捧げます」みたいな勇敢な人ばっかりで。

その点、風太郎は忍者として特別な才能もないし、度胸も覚悟もなさそうで上から命を受けたからやる。という感覚の「組織の一員として」動いているように感じられました。

この当時はきっともっと積極性がないとダメなんでしょうけど、この感覚は現代社会で働く私たちとリンクしているように感じられて、なんだか妙に愛着が湧いて好きになってしまいました。

POINT2. 歴史×ファンタジー

風太郎の運命を大きく変えるもの。それはズバリ、ひょうたん。
ひょうたんの中に封印されてしまった「因心居士」という謎のおじいちゃんが彼を導くという設定。

このあたりは著者・万城目学さんの得意な歴史とファンタジーの融合で、本書を読みやすくしているポイントかと思います。

ストーリーには豊臣秀吉が大きく関わってくるので、豊臣家のシンボルとも言えるひょうたんをストーリーのキーアイテムに持ってくるあたりも、オシャレだなぁと思いました。

読み終わった後に、どこまでが史実に基づいていて、どこからがファンタジーなのか確かめたくなってしまうのも万城目作品のポイント。

そこからさらに興味が湧いて、他の歴史小説にチャレンジ……なんてきっかけになれたら最高です。

POINT3. 歴史の流れがわかりやすい

歴史って、私たちは過去の事として俯瞰で見ていますが、風太郎にとっては今起きていることでこの後どうなるのかなんて、もちろんわかっていないんですよね。

本書は、風太郎の目線でストーリーが進むので「当事者」の目線で読めるのがポイント。

歴史上有名な出来事、人物なのでもうわかってますよね?というような周知の事実として書いてあるのではなく、彼のリアルな体験記として感じることができます。

ですので、歴史に詳しくなくても大丈夫。

もちろんフィクションではありますが、豊臣から徳川幕府への移り変わりが把握できますし「あの出来事にはこういう流れがあったんだ」という背景もわかるようになります。

『とっぴんぱらりの風太郎』感想・まとめ

今回は、私が歴史小説に興味を持つきっかけとなった作品をご紹介しました。

気軽に読めるのに、最後は心に爪痕を残していく。戦国時代に思いを馳せて、過去の出来事から教訓を得るきっかけになるかもしれません。

歴史小説の入門書として、気軽に手に取ってみてください。

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この記事を書いた人

これまでに何百冊もの小説を読んできました。その中から特に心に残った一冊を、少しずつ書評としてまとめています。

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