『村上海賊の娘』感想・レビュー・あらすじ|人は、なんのために頑張るのか

『村上海賊の娘』感想・レビュー・あらすじ|なんのために頑張るのか
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当記事は和田竜著『村上海賊の娘』の書評です。

本屋大賞を受賞した話題作。石山本願寺での合戦を描いた歴史小説なのですが、なんと主人公は実在した女性。戦国時代の作品としては、めずらしいですよね。

しかもこの主人公、まぁ強くて海賊の一員として男性と互角に戦います。

そんな強くてかっこいい彼女が戦を通して、なんのために戦うのか、強さとは何かを追求していく物語。

シチュエーションは違えど、現代社会を生きる私たちにも通ずるところがありますよね。

強くてかっこいい主人公に、ヒントがもらえるかもしれません。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。

目次

『村上海賊の娘』あらすじ

『村上海賊の娘』あらすじ

織田信長が室町幕府最後の将軍、足利義昭を奉じて京に旗を立て、西に勢力を伸ばそうとしていた頃のこと。時は天正四年(一五七六年)、比叡山焼き討ちから五年、武田軍を粉砕した長篠合戦の翌年に当たる。信長と大坂本願寺の戦いは七年目を迎えていた。

『村上海賊の娘』和田竜著 文春文庫出版 (2013/10/20)より引用

瀬戸内海を代表する、村上海賊の当主の娘として生まれた景(きょう)。この時代、海に仕事に行くのは男の仕事。なのに、景は父から受け継いだ圧倒的な強さで、男たちと共に海賊として従事しています。

ある時、織田信長との長引く戦で疲弊した大坂本願寺から、助太刀を頼まれた村上海賊。加勢することになり、景も出陣することに。果たして村上家の運命は……。

この戦いは、後にいう石山合戦のほんの一部を切り取ったもの。

地元では海賊として充実した日々を送っていた景が、はじめて参加した戦で見たもの、感じた違和感、戸惑いを女性目線で追った、一味ちがう歴史小説。

ぜひ、手にとってみてください。

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『村上海賊の娘』感想・レビュー

『村上海賊の娘』感想・レビュー

主人公・景を通して感じたのは、人はなんのために戦うのかということ。これが本書のテーマのように感じました。

やんちゃで腕っぷしが強い景は、シンプルに自分の力を試すのが楽しくて海賊働きをしていましたが、戦を通して「戦う理由」を模索していく姿は、現代社会を生きる私たちの「なんのために働くのか」に共通する部分があるかと思います。

女性が主人公の話ですが、性別関係なく立ち止まりたい時や「なんのために頑張っているんだっけ?」と思ってしまった時に、自分を見つめ直すヒントやきっかけをくれるのではないでしょうか。

3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。

POINT1. 主人公が女性であること

歴史小説で女性が主人公は、ほんとうに珍しいこと。

実在の人物をモデルとしているのですが、作中でも触れられている通り、そもそも女性の記録が全然残っていない時代。巻末の参考文献の数からもわかる通り、下調べに相当な時間がかかっただろうなと著者・和田さんの苦労がうかがえました。

ですが女性が主人公となったことで、戦の緊迫した雰囲気を和らげてくれる要素が入ってきて、読みやすくしてくれています。

例えば、景は腕っぷしが強く、気性も荒くて、おまけに顔立ちがあまり男ウケするタイプではなかったようで、地元ではブス扱いされている。という、およそヒロインとは思えない設定なのですが(涙)

石山合戦に参加するため大阪に赴くと、事態は一変。なんと大阪では景の顔立ちは「えっらい別嬪(べっぴん)さん」なんだそうで、たちまちモテ期が訪れます(笑)

血なまぐさい緊張感が漂うなかでクスリと笑ってしまう、景のはじめての恋の予感にも注目です!

POINT2. なんのために戦うのか

当時、男性は家業を継ぐ文化がありましたので、海賊に生まれたものは海賊としての心得を、武家に生まれたものは武家としての心得を幼少期から叩き込まれて育ちますが、女性はその限りではありません。

景の場合、海賊働きが楽しいからやっていたのに、参加した戦で目の当たりにした男性たちの政治の駆け引きや損得勘定に、戦う意味がわからなくなってしまいます。

こういう経験、あなたにもありませんか?

もともとは楽しくて始めた習い事やスポーツなのに、大会やコンクールで結果を求められるようになって楽しくなくなってしまったり、仕事も興味のある分野に進んだのに、利益や結果を求められてしんどくなってしまったり。

自分の気持ちと、求められることとのバランスの取り方。もし、あなたも景と同じ壁にぶち当たっているのであれば、なにかヒントが得られるかもしれません。

POINT3. 歴史の知識が身につく

私は学生時代、正直歴史は苦手科目でした。今思えば、背景がいまいち掴めていなかったことが原因かと思います。

その点、本作は史実に基づいているので、どういう経緯・理由でこの戦いが起きたのかという描写がとてもわかりやすく描かれています。

その当時の世相や雰囲気はもちろん、戦いに巻き込まれていく一般市民の感情なんかもリアルに伝わってくるので、遠い過去のこと。と思ってしまっていた私にとって「たしかにこの時代を生きた人たちがいたんだ。」という実感が持てたことは、大きな収穫でした。

ですので、私のようにもともと歴史が得意でなくてもご安心を。

『村上海賊の娘』感想・まとめ

強さとはなにか。なんのために頑張るのか。

忙しい日々の中で、なんだか心が折れてしまった時、立ち止まりたい時におすすめの歴史小説です。

戦国時代に思いを馳せて主人公の景と共に、自分を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
ぜひ、手にとってみてください。

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この記事を書いた人

これまでに何百冊もの小説を読んできました。その中から特に心に残った一冊を、少しずつ書評としてまとめています。

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