『利休にたずねよ』感想・レビュー・あらすじ|心と向き合う

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当記事は山本兼一著『利休にたずねよ』の書評です。

タイトルの通り、千利休を題材とした作品です。
茶人として名を馳せた彼の生涯を追っていくストーリーなのですが、妻、愛人、上司など縁の深い人物がそれぞれの角度から千利休を語っていくスタイル。

視点が変わり、新たな事実が明らかになる度に読者は驚き、さまざまな感情をぶつけられ心を乱されるでしょう。

しかし、それこそが本書の醍醐味。史実をベースにミステリータッチに描かれた、新感覚の歴史小説。

少し変わったミステリー小説が読みたいときにおすすめです。

あなたにとっての、良き一冊となりますように。

目次

『利休にたずねよ』あらすじ

『利休にたずねよ』あらすじ

女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭へと昇り詰めていく。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、切腹を命ぜられる。利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出した恋とは、どのようなものだったのか。思いがけない手法で利休伝説のベールが剥がされていく長編歴史小説。第一四〇回直木賞受賞作。

『利休にたずねよ』山本兼一著 PHP文芸文庫出版 (2010/10/29)より引用

千利休。名前は知っている人も多いのではないでしょうか。そう、お茶の文化を広めた人ですね。当時はお茶を立てるプロである「茶人」という職業がありました。

では、彼の生涯がどんなものであったのかはご存知でしょうか。武将でも何でもない彼の名が、なぜ近年になってもこれほど知れ渡っているのか。本作では、茶人としての彼の人生を紐解いていきます。

ジャンルとしては歴史小説なのですが、彼の人となりを追っていくストーリーですので、戦がメインの歴史物とは一味違います。

芸術家の伝記を読むような気持ちで、手にとってみてください。

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『利休にたずねよ』感想・レビュー

『利休にたずねよ』感想・レビュー

主人公である千利休は500年以上前の人物。にもかかわらず、作者の山本兼一さんはまるで見てきたことのように、登場人物たちを実にリアルに描きあげていました。

語り手が次々と変わる構成なのですが、千利休本人あり、妻目線あり。と、1人の人間を多角的な視点から掘り下げていく事で、彼の男性としての部分、仕事人としての姿勢など、さまざまな部分が見えてきます。

その「さまざまな部分」が見えてくるほどに彼の人間性が浮かび上がってきて、凄みを感じたり、時にはゾッとしたり……登場人物の誰の目線で読み進めるか、によっても感じ方が変わってくる作品だと感じました。

最後まで読むと、必ずもう1度読み返したくなる。人間の深い部分をもっと覗きたくなってしまう。そんな歴史小説。

3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。

POINT1. ストーリー構成

読み終わって感じたのは、ストーリー構成の巧みさ。

ポイントは2つあるのですが、まず1つめは語り手が次々と変わること。これにより読者は、さまざまな角度から千利休という人間を見ることができます。

たくさんの視点があることで、彼の人間性、人物像がわかってきますし、語り手が変わることでまたイメージが一新されたり、意外な一面が見えてくるおもしろさがありました。

何気ない一文から自分でも気づいていなかった感情に気づかされる。読書好きな方なら、味わったことがあるかと思います。

語り手が変わることで猛烈に共感したり、反対にどうしても理解できない感情にぶつかったりすることで新たな引き出しが生まれて、心を豊かにしてくれる感覚が味わえます。

2つめは、時系列の設定。この構成が重要なキーとなっています。ストーリーを踏まえた上でもう1度読み返すと、2倍も3倍も深みが増す。そんなストーリー構成になっています。

POINT2. 彼の才能・センスに注目

千利休には、彼の才能にまつわる逸話がたくさん残っています。

彼の美的感覚はいわゆる「侘び寂び」の文化に起因するものが多く、豪華な設えよりも極限まで削られた質素なものに美しさを感じる人だったようです。

たとえば、お茶会を開いた時に自分の庭の花をすべて切り取ってしまい、お茶の席にあえて一輪だけ花を生けることで美しさを際立たせた。というエピソード。

あるいは、当時茶人はお茶を飲むため専用の部屋があったのですが、彼が設える部屋はどれも質素で狭く、畳一畳ほどの部屋もあったのだとか。

ただ質素であればいいという訳でもなく、その中に際立った美しさを求めていたみたいですね。独特のセンスは作中からも感じられますので、日本古来の文化のルーツもたどれる1冊です。

芸術・アートが好きな方にもおすすめ。

POINT3. 「心」の描き方

これだけ多角的な視点で、しかも本人の心理描写もあるのに、私は結局最後まで利休の「本心」はわかりませんでした。

人の気持ちってそんなに単純なものではなくて、変わりゆく部分もありますし、うまく説明のつけられない時もありますよね。

そんな「説明のつけられない不完全さ」みたいな部分をうまく表現されているなと感じましたし、人と人がわかりあうって本当にむずかしいことなんだなと、しみじみ実感しました。

『利休にたずねよ』読了後は、このタイトルからいろいろな解釈を想像してしまうのですが、案外、利休自身もわかっていなかったのではないか。

それならば、相手のすべてをわかろうとしなくてもいいのかもしれない。そんな風にも思いました。

心ががんじがらめになっている方は、肩の力を抜くきっかけになるかもしれません。

『利休にたずねよ』感想・まとめ

人の心と向き合うのはいつだってエネルギーが必要。

時には自分と向き合うことにも疲れてしまいがちですが、この作品は誰の視点で読むかによっても感じ方が変わってくるので、さまざまな価値観に触れることで心がふっと軽くなる。そんなきっかけになれたら幸いです。

ぜひ、手にとってみてください。

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この記事を書いた人

これまでに何百冊もの小説を読んできました。その中から特に心に残った一冊を、少しずつ書評としてまとめています。

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