『天地明察』感想・レビュー・あらすじ|時間ってどうやって調べるの?

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当記事は冲方丁著『天地明察』の書評です。

今回ご紹介する作品は、「時間」がテーマの歴史小説。

日本全国、今日も明日も同じ日付、同じ曜日、同じ時間が流れている。

今となっては当たり前のことですが、昔は地域によってばらつきがあったんだとか。

そんな暦(こよみ)を統一したのが渋川春海。実在した人物です。

この人のおかげで、私たちはみんな同じ「時間」を生きることができるんですね。

彼の苦労に思いを馳せながら読むとしましょう。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。

目次

『天地明察』あらすじ

『天地明察』あらすじ

徳川四代将軍家綱の治世、ある「プロジェクト」が立ち上がる。即ち、日本独自の暦を作り上げること。当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く——。日本文化を変えた大計画をみずみずしくも重厚に描いた傑作時代小説。第7回本屋大賞受賞作。

『天地明察』冲方丁著 角川文庫出版 (2012/5/21)より引用

時は江戸時代。当時、全国各地でばらつきのあった暦(こよみ)を統一するべく奔走した男の物語。実在した渋川春海をモデルに、暦統一までの挫折と苦悩の20年を描いたストーリー。

」とは時間、月、曜日のことですね。今私たちが認識している「時間」も、彼が計算して導き出してくれたものです。

どのようにして導き出したのか。どんな苦労があったのか。そもそも、なぜ地域によってばらつきがあったのか?

コツコツと諦めずに続けることの大切さを教えてくれる、究極のお仕事小説。

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『天地明察』感想・レビュー

『天地明察』感想・レビュー

生まれた時から時計があって、万が一時計がズレても時報を聞けば正確な時間を教えてくれる。
携帯電話やパソコンが普及してからは、ネットワークを通して常に正確な時間を表示してくれる。

「時間」とは、私たちにとってはそういうものではないでしょうか。統一されていることが当たり前すぎて、「みんなが認識している時間がバラバラだったら」なんて考えたこともありませんよね。

便利な時代に生まれてきたことはとてもありがたいことですが、昔の人の「不便なことを改善しよう、難しいことだけどチャレンジしてみよう」というガッツと努力には敵わないな。と思いました。

渋川春海さんに、心からのリスペクトと拍手を送りたいと思います。

3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。

POINT1. 暦とは

あなたはこれまでの人生の中で、暦に注目したことってありましたか?私はないです。
携帯を見ればいつでも正しい日時を知ることができますし、それが人によってバラバラなんて事はありえませんよね。

そもそも時計というものがない状態で、どうやって暦を計算するのか。
星を、見るんだそうです。星や太陽の位置を観測して、距離を計算することで時間を割り出しているんですね。暦は数学と大きく関わっているという事も、改めて実感しました。

渋川春海は数学・算術が非常に得意だったそうで、暦の改定を命じられたのもその能力を買われてのことだったそう。

かつて地動説を唱えたガリレオ・ガリレイや、万有引力を唱えたニュートンなど、天文学者と呼ばれた人たちは、同時に数学者や物理学者であることも多いのですが、納得です。数学なくして暦は導き出せなかったのですね。

POINT2. 平和な歴史小説

歴史小説って戦国時代を舞台にしたものが多いと思うのですが、この作品は戦乱期が落ち着いた江戸時代・第四代将軍である徳川家綱の時代が舞台となっています。

彼の政治の特徴はこれまでの武力による武断政治から、学問による「文治政治」に方針を切り替えたこと。その取り組みの一環として、暦統一という一大事業を持ち上げたのですね。

なんだか素敵ですよね。もちろん、調査には20年以上の歳月がかかっていて大変な苦労をされているのですが、世の中を整えよう、便利にしようという発想がいいなと思いました。

武力や血生臭さとは距離をおいた、知的で平和な内容ですのでお仕事小説、自伝のような雰囲気で楽しめます。

POINT3. 心理描写と背景描写

読んでいて印象的だったのは、著者・冲方丁さんの紡ぎ出す言葉。
実在した人物ということもあり憶測や想像は描きにくい中で、当時の雰囲気を心理描写に絡めて説明するのがとてもわかりやすいなと思いました。

私がグッときたのは「暦」というめずらしいテーマを、主人公の心理描写で説明しているところ。

暦は約束だった。泰平の世における無言の誓いと言ってよかった。
″明日も生きている″
″明日もこの世はある″
天地において為政者が、人と人とが、暗黙のうちに交わすそうした約束が暦なのだ。
この国の人々が暦好きなのは、暦が好きでいられる自分に何より安心するからかもしれない。戦国の世はどんな約束も踏みにじる。そんな世の中は、もう沢山だ。

『天地明察』冲方丁著 角川文庫出版 (2012/5/21)より引用

ハッとしませんか?平和な時代を生きてきた私たちにとっては、明日が来るのは当たり前で、約束を交わすことに特別な想いなんてないはず。

そのことを、現代を生きている冲方さんが代弁できるのはすごいことだと思いますし、現代と当時の違いが浮き彫りになって、多角的な視点を持てるのが歴史小説の醍醐味だなと感じました。

『天地明察』感想・まとめ

今回は、人生をかけて壮大な事業を成し遂げた男の物語をご紹介しました。
戦わない、血も流れない、知性と努力にただただ圧倒される。そんな歴史小説です。

心理描写が丁寧でグッとくるシーンもたくさんあるので、ヒューマンストーリーが好きな方にもおすすめ。

ぜひ手にとってみてください。

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この記事を書いた人

これまでに何百冊もの小説を読んできました。その中から特に心に残った一冊を、少しずつ書評としてまとめています。

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