『書楼弔堂 破暁』感想・レビュー・あらすじ。本好きに捧げる1冊

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当記事は『書楼弔堂 破暁』の書評です。

突然ですが、あなたには印象に残る最高の1冊はありますか?

私は読書が大好きでかれこれ1000冊以上の本を読んできたので、たった1冊だけと言われるとなかなか難しいのですが、一方で、まだ出会っていない作品でもっとすごい読書体験が出来るかもしれない……と期待しながら次に読む本を探している事も。

今回ご紹介するのは、そんな人生最高の1冊を探し求めて本屋を訪れる人々のストーリー

ストーリーの中で扱っている作品も、本当に出版されているものですので、読書好きには堪らない1冊となるはずです。

『書楼弔堂 破暁』とは?

『書楼弔堂 破暁』は、2013年に集英社より出版。

明治中期の書店・弔堂を舞台に、様々な著名人たちが「人生にふさわしい一冊」に出会っていくという連作短編集。

全4冊のシリーズとなっており、以降の作品に『書楼弔堂 炎昼』『書楼弔堂 待宵』『書楼弔堂 霜夜』がある。

『書楼弔堂 破暁』あらすじ

明治二十年代の半ば。雑木林と荒れ地ばかりの東京の外れで日々無為に過ごしていた高遠は、異様な書舗ほんやと巡りあう。本は墓のようなものだという主人が営む店の名は、書楼弔堂。古今東西の書物が集められたその店を、最後の浮世絵師月岡芳年や書生時代の泉鏡花など、迷える者たちが己のための一冊を求め〈探書〉に訪れる。変わりゆく時代の相克の中で本と人の繋がりを編み直す新シリーズ、第一弾!

『書楼弔堂』京極夏彦著 集英社文庫出版 (2016/12/25)より引用

タイトルは「しょろう とむらいどう」と読みます。

およそ本屋とは思えない佇まいなのですが、一歩中に踏み込むと、見渡す限りの本、本、本……。

ない本はないのではないかと思うほどの在庫量──。本好きには堪らないシチュエーションですよね。

さまざまな想いを抱えた人物が弔堂を訪れ、最高の1冊を求めていきます。

本は人を救ってくれるのでしょうか?すべての本好きにおすすめしたい1冊

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『書楼弔堂 破暁』感想・レビュー

読書が好きな方なら、何気なく読んだ1冊の本に救われた経験はきっとあるかと思います。

悩み、葛藤しながら「書楼弔堂」にたどり着いた人々が店主によって救われていく様子は、共感と羨ましさを感じるものでした。

ストーリー自体はフィクションなのですが、史実に基づいた構成になっているので、本当にこんな事があったのかもしれないな……なんて思いを巡らせながら、ワクワクする読書体験でした。

ポイントを3つに絞ってお伝えします。

POINT1.周りの変化に戸惑う主人公に共感

舞台は明治時代の中期。

主人公は江戸時代末期に武士の家に生まれますが、開国により江戸時代が終わり、士農工商制度が撤廃すると主人公は無職になってしまいます。

現代の私たちからすると、この当時の出来事として大政奉還、廃藩置県というワードは歴史の教科書で何となく見たな〜という程度でしょう。

ですが当時を生きていた人たちは、明日から四民平等ですよと言われても急には馴染めなかったはず。

著者である京極夏彦さんは昭和の生まれですが、開国して目まぐるしく変化する日本の様子を、まるでこの時代を見てきたのかと思うほど鮮明に描かれていました。

環境の変化に戸惑っている、うまく馴染めずにいる時に心を軽くしてくれるかもしれません。

POINT2.歴史上の人物が出てくる!

本書は6つのストーリー構成になっているのですが、1話毎に実在した人物が登場します。

あるストーリーでは浮世絵師、また別のストーリーでは歴史の教科書に出てくる有名人も登場し「え、まさかあの人⁉︎」という驚きを禁じ得ませんでした。

近代史は歴史の授業でもサラッとしか出てこないと思うので、この作品を通して当時の情勢や雰囲気を知れたことは貴重な体験となりました。

歴史に詳しくなくても、本書をきっかけに明治時代の出来事をもっと知りたくなる。そんな1冊です。

POINT3.本屋・出版社の在り方について考える

現代では読書というと、趣味や娯楽のひとつという位置づけになるかと思いますが、当時は少し違ったようです。

江戸時代、学校に通えるのは上流階級のほんのひと握りだったので、識字率が現代よりもはるかに低かったそう。

そのため、本自体が勉強のために読む教科書のような役割を果たしていたようですが、明治時代に入り義務教育制度が導入されると文字を読める事が一般的になり、書籍の在り方は一変します。

その変化の中で書籍を扱う出版社や本屋、そして“書き手”もまたニーズの変化に対応しつつ現在があるのだなと実感しました。

書籍を残した人物も出てきますし、ストーリーに出てくる書籍は実際に出版された本(絶版になっているものや手に入りにくい物もあります)ですので、そちらも読んでみたくなる本好きのための作品だなと感じました。

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『書楼弔堂 破暁』著者について

『書楼弔堂 破暁』の著者である京極夏彦は、1994年デビュー小説家。

広告代理店勤務、デザイン会社設立を経て、趣味で執筆した『姑獲鳥の夏』を講談社に持ち込んだところ、完成度の高さに驚いた編集者からすぐに連絡があり、1994年同作で小説家デビューすることとなった。

以降、妖怪や怪奇現象をモチーフとしたミステリー小説を中心に執筆活動を続けている。

『書楼弔堂 破暁』まとめ

今回は『書楼弔堂 破暁』をご紹介しました。

次の休日は、たくさんある書籍の中から最高の1冊を見つける……本好きにはたまらない、そんなシチュエーションにどっぷりと浸かってみるのはいかがでしょうか。

あなたにとって、良き1冊となりますように。

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