当記事は、原田マハ著『旅屋おかえり』の書評です。
努力が報われない、もう頑張れない。
そんな経験は、きっと誰にでもあるのではないでしょうか。
今回は、そんなあなたのくじけそうな気持ちに効くビタミン小説をご紹介します。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。
『旅屋おかえり』とは?
『旅屋おかえり』は、2012年に集英社より出版された原田マハのヒューマン小説。
安藤サクラ主演でドラマ化もされた話題作。続編に『丘の上の賢人』がある。
『旅屋おかえり』あらすじ
あなたの旅、代行します!
『旅屋おかえり』原田マハ著 集英社文庫出版 (2014/9/25)より引用
売れない崖っぷちアラサータレント“おかえり”こと丘えりか。スポンサーの名前を間違えて連呼したことが原因でテレビの旅番組を打ち切られた彼女が始めたのは、人の代わりに旅をする仕事だった―—。満開の桜を求めて秋田県角館へ、依頼人の姪を探して愛媛県内子町へ。おかえりは行く先々で出会った人々を笑顔に変えていく。感涙必至の“旅”物語。
高校卒業と同時に東京へやってきて早10年以上。唯一のレギュラーであった旅番組も打ち切りが決まり、崖っぷちの主人公“おかえり”。
そんな彼女に、前職の経験を活かした“旅の代行”という変わった依頼が飛び込んできて……。
人の代わりに旅をすることで、さまざまな人と出会い、人の出会いによって救われていく。お仕事系ビタミン小説。
もう一度頑張ろう、立ち上がろうとしている人にはもちろん、立ち上がる気力が萎えてしまった人にも読んでほしい。背中を押してくれる1冊です。
続編『丘の上の賢人 旅屋おかえり』も出ています。
『旅屋おかえり』感想・レビュー
読了後「よし、明日からまた頑張ろう」そんなふうに思える作品でした。
報われなくても腐ることなく、コツコツと目の前のことに取り組むのは口で言うほど簡単なことではないはず。
それでも焦らず腐らず、依頼人のために仕事を全うする主人公の“おかえり”の姿は、読者である私たちをも奮い立たせてくれるものがありました。
つらい時の考え方や向き合い方は参考になるものでしたし、挫折感を味わったことがある人なら、胸に響くのではないでしょうか。
3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。
POINT1. つらい時の考え方
唯一のレギュラー番組が打ち切りになり、仕事ゼロ。いきなり崖っぷちの状態からストーリーは始まります。
そこで注目したのは、主人公“おかえり”の意志の強さ。
東京で売れるまで地元には帰らないと決めて、くじけそうなときは何度も芸能界入りするきっかけとなった社長とのエピソードを思い出し、頑張っています。
これって、なかなか誰にでも出来ることではありませんよね。
崖っぷちの時って、焦っていて余裕がないので決断も血迷いがちだと思いませんか?
この、つらい時こそ初心に返る思考はぜひ取り入れたいと思いましたし、“おかえり”のマインドになれれば、そもそもつらさを感じにくくなるのでは?と、考え方のヒントをもらえる内容でした。
POINT2. 旅行気分が味わえる
主人公の“おかえり”は依頼人からの旅を代行するべく、北は秋田から南は愛媛まで、さまざまな土地に旅に出ます。
日本の美しい風景もたくさん出てきて、読んでいるだけで国内旅行をしている気分が味わえます。
しかも、“おかえり”の旅のスタイルは目的地だけではなく、電車に揺られる時間を楽しむことにもあるので、まったりとした気分で道中も楽しめるのが嬉しいところ。
旅行のお供にもおすすめですし、なかなか旅行にいけない時に家にいながら旅行気分を味わうこともできます。
POINT3. 転んで学ぶ。
頑張ったのに努力が報われない。そんな時、あなたはどうしてきましたか?
次に行くもよし、こだわり続けるもよし。ですが、大事なのはそこから何を学んだか。ではないでしょうか。
次が見えない中で模索しながら進んでいる“おかえり”の姿から感じるのは、悲壮感ではなくたくましさでした。
結果が出なくても、続けられるのは「好きだから」の一言に尽きると思いますが、好きでもただやり続けるだけでは結果に結びつきませんよね。
失敗は成功のもと、とはよく言ったものですが、失敗して次にどう活かすのか。そのヒントが得られるかもしれません。
『旅屋おかえり』の著者について
『旅屋おかえり』の著者である原田マハさんは、小説家になる前からキュレーター(※)という職業に就かれている珍しい経歴の持ち主。
海外在住経験を活かした題材も多く、映画化・ドラマ化された作品も多数。人情味のあるストーリーが持ち味です。
※博物館、図書館、美術館などにおいて、展示する資料や作品の管理、鑑定を行専門管理職。
『旅屋おかえり』感想・まとめ
今回は、疲れた時、くじけそうな時に読みたい小説をご紹介しました。
友人に話を聞いてもらったり、出かけてリフレッシュするのもいいですが、本の世界で自分と向き合う。
次の休みは、そんな過ごし方はいかがでしょうか。