『帰れない山』感想・レビュー・あらすじ。いろんな生き方があることを知る

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当記事はパオロ・コニェッティ著『帰れない山』の書評です。

自分の人生を生きられていないような感じする。

じゃあどんな人生を生きたいかと言われると、はっきりしたイメージはない。

この感覚に心当たりはあるでしょうか。

今回ご紹介する作品は、まさに生き方を模索中の、ある男たちの物語です。

彼らを通して、自身を見つめ直すきっかけになれば幸いです。

目次

『帰れない山』とは

『帰れない山』は、イタリア人作家であるパオロ・コニェッティにより2017年に出版された長編小説。

出版後すぐに話題となり、イタリア文学界の最高峰であるストレーガ賞を受賞。フランスでは、若手作家に贈られるメディシス賞の外国小説部門を受賞、英国PEN翻訳小説賞など多数の賞に選ばれ、世界39の言語で翻訳されている国際的ベストセラー。

2023年には映画化もされ、カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞。

『帰れない山』あらすじ

街の少年と山の少年

二人の人生があの山で再び交錯する

美しく雄大で、ときに残酷なまでに厳しいアルプスの山々。

少年は山での日々を通じて友に出会い、父の生き方を学び、真の大人へと成長してゆく。深い感動に包まれる国際的ベストセラー。

『帰れない山』パオロ・コニェッティ著 新潮社出版 (2018/10/30)より引用 

舞台はイタリア。ミラノの街で暮らす主人公のピエトロと、山で生きるブルーノ。

対照的な環境で育ったはずなのに不思議と気が合う2人は、山でたくさんのことを学び、友情を育んでいきます。

少年時代から壮年期にかけての2人が感じる人生の苦悩や葛藤を描いたストーリー。

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『帰れない山』感想・レビュー

舞台はイタリア三代名峰のうちの一つ、モンテ・ローザ山麓のとある村なのですが、作中に出てくる自然の描写がとても鮮明で

実際に山に来たかのような清々しさと自然の厳しさや残酷さ、その両方を感じることができました。

シティボーイである主人公のピエトロと、山から降りたことのないブルーノの対照的な人生。

著者であるパオロ・コニェッティは、このどちらがいい悪いではなく、さまざまな生き方があるのだということを示唆しています。

自分はどう生きたいのか、どうありたいのか。そんなことを改めて考えながら読ませてもらいました。

3つのポイントに絞って解説していきます。

POINT1.鮮明な情景描写

著者であるパオロ・コニェッティは、ミラノ出身でありながら幼少期から夏の期間は山で過ごすという体験をされてきたそうです。

これは本作の主人公・ピエトロと同じですので、主人公には著者自身の体験や要素が多く反映されているようです。

そのため、山や自然の描写にとてもリアリティがあり、読む毎に頭の中に風景が浮かび上がり、自身も大自然の中に放り込まれてしまったような没入感を感じることができました。

時には脅威となり、また時には都会で疲れた心を癒してくれる。そんな自然がページを捲るたびに浮かび上がってきますので

自宅にいながら雄大なイタリアの山を味わうことができます。

POINT2.人との関係性や距離感を考える

作中では、主人公が10歳頃から40歳頃までの約30年間を描いています。

その中で、母親との関係性、父親との距離感、友人であるブルーノとの付き合い方、恋……などなど、大人になっていく過程でたくさんの変化が描かれています。

あまり器用とはいえない主人公が社会と関わり、模索しながら成長していく姿は共感できる方が多いはず。

1人の人がどのように生き、そしてどのように生きていくのか。このストーリーからは、生き方のヒントがもらえます。

POINT3.いろいろな生き方があることを知る

ピエトロは旅先で出会った、年老いたネパール人からこんな話を聞きます。

世界の中心には須弥スメール山というものすごく高い山がそびえていて、この山を囲むようにして8つの海と山がある。その上で、8つの山を巡るものと須弥スメール山を極めるもの、どちらがより多くを学ぶのだろうか。

これは古代インドに伝わるもので、仏教やバラモン教、ジャイナ教、ヒンドゥー教にも共有されている概念だそう。

この“教え”を聞いたピエトロは、自分が8つの山を巡る者、ブルーノを須弥スメール山を究める者と感じ、ブルーノにこの話をしてやろうと心に決めます。

これは一つの考え方ですので、どちらが正解ということではありません。あなたは、自分をどちらのタイプと感じるでしょうか。

ピエトロとブルーノのように、対照的でもお互いを支えて励まし合える、そんな関係性は素敵だなと思いました。

『帰れない山』の著者について

『帰れない山』の著者であるパオロ・コニェッティは、イタリアで活躍する作家。

2004年に短篇集『成功する女子のためのマニュアル』で作家デビューしてからは、短篇集を中心に執筆していた。

2012年に出版した『ソフィアはいつも黒い服を着る』で、イタリア文学界の最高峰であるストレーガ賞の最終候補となり、初の本格的な長編小説となる本書『帰れない山』でストレーガ賞を受賞。

『帰れない山』感想・まとめ

今回は、海外作品の『帰れない山』をご紹介しました。

雄大な大自然に触れながら、自分とは何かを見つめ直す。

次の休日に、そんな読書体験はいかがでしょうか。

あなたにとって、良き1冊となれば幸いです。

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