今回は、ヒューマンストーリーに定評のある三浦しをんさんの作品をご紹介します。
家にいながら心を動かされ、スッキリする。読書の最大の効能ではないでしょうか。
三浦さんは「現実世界にいそうな普通の人たち」を描くのがとってもお上手。
グッとくる、共感できるストーリーばかりですので、仕事で疲れて気分がクサクサする時、明るい気持ちになりたい時におすすめです。
長編・短編の両方セレクトしましたので、休日を使って没頭するも良し、平日の寝る前に少しずつ読み進めるも良し。
気分に合った1冊が見つかれば幸いです。
三浦しをん小説おすすめ10選
三浦さんは、取り扱う題材が多いのも面白いところ。
今回ご紹介する作品もミステリーから恋愛もの、辞書を作る編集部で働く人々から、おじいちゃんの友情ストーリーまで、実にさまざまな人たちにスポットライトを当てています。
どの作品にも、ちょっとダサくて情けない、だけどとっても魅力的な人物が登場して、あなたをほっこり癒してくれることでしょう。
- 舟を編む
- 神去なあなあ日常
- まほろ駅前多田便利軒
- 風が強く吹いている
- 私が語りはじめた彼は
- 月魚
- 小暮荘物語
- 政と源
- きみはポラリス
- 天国旅行
舟を編む
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!
『舟を編む』三浦しをん著 光文社文庫出版 (2015/3/20)より引用
三浦しをんさんの作品の中で、私が1番好きな作品です。
国語辞書をつくる人たちの苦労と喜びを描いたストーリー。
出版社の中でもあまり目立たない“辞書編集部”。1冊つくるのに膨大な時間と資金が必要なことから、ろくに人材も回してもらえずイマイチ活気のない様子……。
そんな時、営業部から異動してきた主人公・馬締の存在が、辞書編集部の空気を変えていきます。
辞書作りに全力を注ぐ者、仕事との向き合い方に悩む者……さまざまな人たちが触れ合い、悩みながら辞書づくりに励む姿に胸を打たれること間違いなし。
神去なあなあ日常
平野勇気、18歳。高校を出たらフリーターで食っていこうと思っていた。でも、なぜだか三重県の林業の現場に放りこまれてしまい——。
『神去なあなあ日常』三浦しをん著 徳間文庫出版 (2012/9/15)より引用
携帯も通じない山奥!ダニやヒルの襲来!勇気は無事、一人前になれるのか……?
四季のうつくしい神去村で、勇気と個性的な村人たちが繰り広げる騒動記!
林業エンタテインメント小説の傑作。
ひょんなことから林業に携わることになった、主人公の勇気。
これまでの都市での生活からは一変し、携帯も通じないド田舎での暮らしにはじめは戸惑い、逃げ出そうとします。
しかし、林業の厳しい現実と先輩たちのプロの仕事ぶりを目の当たりにし、少しずつ責任感が芽生えて……18歳の少年の成長を描いたお仕事小説。
コメディタッチで笑えるシーンがたくさん出てきますので、明るい気持ちになりたい時におすすめ。
後日譚を収録した『神去なあなあ夜話』も必見です。
まほろ駅前多田便利軒
まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。ペットあずかりに塾の送迎、納屋の整理etc.——ありふれた依頼のはずがこのコンビにかかると何故かきな臭い状況に。
『まほろ駅前多田便利軒』三浦しをん著 文春文庫出版 (2009/1/10)より引用
便利屋を営む多田と、友人の行天。日々、さまざまな依頼が舞い込みますが、それほど難しい依頼ではないはずなのに何故かいつもトラブルに……。
このトラブルになる様と、どこかズレている2人のやりとりが笑えるのなんの。
ですが、クスリと笑えるのに何故か最後にはほろりときてしまうのも本書の最大の魅力。
シリーズ化されている人気作で、本書の後に『まほろ駅前番外地』『まほろ駅前狂騒曲』と続く3部作となっています。
疲れた時、あたたかい気持ちになりたい時におすすめの人間味溢れるヒューマンストーリー。
風が強く吹いている
箱根駅伝を走りたい——そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ!「速く」ではなく「強く」——純度100パーセントの疾走青春小説。
『風が強く吹いている』三浦しをん著 新潮文庫出版 (2009/7/1)より引用
名もなき大学の弱小チームが、箱根駅伝を目指すストーリー。
部員たったの10人、うち陸上経験者は3人という無茶な状況からはじまった陸上部。
ぶつかり合い、何度も挫折しながらそれでも走ることを選び、絆を深めていく10人の姿は涙なしには読めません。
この10人が個性豊かでとっても魅力的。「普通の人たち」を描くのが上手い三浦さんが生み出すキャラクターたちにも注目です。
刺激が欲しい時、初心に返りたい時におすすめの青春小説。
私が語りはじめた彼は
私は、彼の何を知っているというのか?彼は私に何を求めていたのだろう? 大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘——それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。だが、それは愛というようなものだったのか……。「私」は、彼の中に何を見ていたのか。迷える男女の人恋しい孤独をみつめて、恋愛関係、家族関係の危うさをあぶりだす、著者会心の連作長編。
『私が語りはじめた彼は』三浦しをん著 新潮文庫出版 (2007/8/1)より引用
なんと、タイトルの「彼」は出てきません。
「彼」の妻、愛人、子供、部下……さまざまな視点から語られる思い出、遺恨。人はなぜ、人を愛し、憎むのか。それぞれの心の闇を描いた連作ミステリー。
当の本人が回想シーンでしか登場しないというのがポイント。視点が変わることによって一新される「彼」のイメージに翻弄されること間違いなし。
だんだんと明らかになっていく事実にも注目です。
ちょっぴり怖いけど、続きが気になってしまう。人間の底を見たような気にさせられる一風変わったミステリー。
月魚
古書店『無窮堂』の若き当主、真志喜とその友人で同じ業界に身を置く瀬名垣。瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる古書界の嫌われ者だったが、その才能を見抜いた真志喜の祖父に目をかけられたことで、幼い2人は兄弟のように育った。しかし、ある夏の午後起きた事件によって、2人の関係は大きく変っていき……。透明な硝子の文体に包まれた濃密な感情。月光の中で一瞬魅せる、魚の跳躍のようなきらめきを映し出した物語。
『月魚』三浦しをん著 角川文庫出版 (2004/5/25)より引用
古書店を営む真志喜と、友人の瀬戸垣。
幼い頃から仲良しだった2人。しかし、あるとき関係性を大きく狂わせる出来事が起きてしまう。
心にわだかまりを残したまま大人になり、仕事仲間となった2人の距離はもう埋められないものなのか?
男同士の友情・人生を描いたストーリー。
一歩前に進みたい時、自分を見直したい時におすすめです。
小暮荘物語
小田急線の急行通過駅・世田谷代田から徒歩五分、築ウン十年、全六室のぼろアパート木暮荘。そこでは老大家木暮と女子大生の光子、サラリーマンの神崎に花屋の店員繭の四人が、平穏な日々を送っていた。だが、一旦愛を求めた時、それぞれが抱える懊悩が痛烈な悲しみとなって滲み出す。それを和らげ癒すのは、安普請ゆえに繋がりはじめる隣人たちのぬくもりだった……。
『木暮荘物語』三浦しをん著 祥伝社文庫出版 (2014/10/20)より引用
木暮荘に住む面々は、今日も平穏な日々を過ごしています。
だけど、みんなそれぞれ人には言えない悩みや孤独を抱えている——。
お隣さんと交流なんて一昔前の話ですが、こんな時代だからこそ胸に染み入るヒューマンストーリー。
読み終わる頃には、ほっこり温かい気持ちになれます。
政と源
東京都墨田区Y町。
つまみ簪職人・源二郎の弟子である徹平(元ヤン)の様子がおかしい。原因は昔の不良仲間が足抜けすることを理由に強請られたためらしい。それを知った源二郎は、幼なじみの国政とともにひと肌脱ぐことにするが——。
弟子の徹平と賑やかに暮らす源。妻子と別居しひとり寂しく暮らす国政。ソリが合わないはずなのに、なぜか良いコンビ。
そんなふたりが巻き起こす、ハチャメチャで痛快だけど、どこか心温まる人情譚!Amazonより引用
幼なじみの「政」と「源」。性格も生き様も正反対なのに、なぜかいつも一緒にいます。
家族に見放され孤独な老後生活をおくる政は、人から愛される源をうらやましく思うあまり、ひがんで突っかかってしまうこともしばしば。
そんな源から、人との向き合い方を学び、見放された家族に歩み寄ろうと奮闘する政の姿に、ホロリとくるものがありました。
源に対する羨望、ひがみ、嫉妬……。誰もが感じたことのある「心の葛藤の描写」がとても細やかで、共感できることばかりです。
読み進めるうちに「政」を通して、気持ちの折り合いの付け方、人との付き合い方を見直すきっかけになるかもしれません。
きみはポラリス
どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう。三角関係、同性愛、片想い、禁断の愛……言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だと知っている——。誰かをとても大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる、最強の恋愛小説集。
『きみはポラリス』三浦しをん著 新潮文庫出版 (2011/3/1)より引用
人を恋しいと思うピュアな気持ちを綴った10編の短編集。
1話40ページほどの短いストーリーですので、ゆっくり本を読む時間がない時でも大丈夫。
寝る前のほんのひと時、電車の中で、好きな時に物語の世界に浸ってください。
天国旅行
現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。富士の樹海で出会った男の導き、命懸けで結ばれた相手へしたためた遺言、前世の縁を信じる女が囚われた黒い夢、一家心中で生き残った男の決意——。出口のない日々に閉じ込められた想いが、生と死の狭間で溶け出していく。すべての心に希望が灯る傑作短編集。
『天国旅行』三浦しをん著 新潮文庫出版 (2013/8/1)より引用
「死」をテーマにした7つの短編集。
少し重めの内容ですが、最後には希望が持てるストーリーばかりですのでご安心を。
悲しみ、諦観の先にあるものとは——。
心のデトックスにどうぞ。
三浦しをんおすすめ10選・まとめ
今回は、三浦しをんさんの作品をご紹介しました。
仕事に疲れてしまった時は、物語の世界に没頭し、別の誰かの人生に触れることで心のデトックスになるかもしれません。
あなたの心に響く1冊が見つかりますように。