『羊と鋼の森』感想・レビュー・あらすじ|迷ったときの指針に

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当記事は宮下奈都著『羊と鋼の森』の書評です。

今回ご紹介する小説は、心の軸について考えるきっかけをくれる作品です。

就職したばかりの青年が、経験を積みながら自分はどうあるべきなのかを探っていくストーリー。

就職したての方も、そうでない方も、自分を見つめ直すきっかけになるかもしれません。

あなたにとっての、良き一冊となりますように。

目次

『羊と鋼の森』あらすじ

『羊と鋼の森』あらすじ

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく——。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。

『羊と鋼の森』宮下奈都著 文春文庫出版 (2018/2/10)より引用

ピアノの調律師・板鳥との出会いによって、自らも調律師を目指すことにした外村。

板鳥と同じ楽器店に就職するものの、なかなかコツが掴めず苦戦します。
「音色を調整する」という正解のない仕事を通して、どこに軸を置けばいいのか、何を大切に考えればいいのか模索していくストーリー。

お仕事小説なのですが、物語全体に漂う静かで穏やかな空気に心が癒されていくのを感じます。

眠る前のほんのひとときに、美しい描写をじっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。
ぜひ手にとってみてください。

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『羊と鋼の森』感想・レビュー

『羊と鋼の森』感想・レビュー

とても静かな物語なのに、胸がじんわり熱くなる。
お仕事小説特有の胸にドカンとくる熱気ではなく、ホッカイロのようにポッと温かさを感じる。そんな物語でした。

主人公の外村はピアノの調律師をしています。彼は要領がいいタイプでもなければ、特別な才能の持ち主でもありません。

「どうしたら調律がうまくなれるのか」といつも考えているけれど、いまいちコツが掴めずにいる。そんな発展途上なモヤモヤを抱えた描写が、とてもリアルで共感できました。

今仕事を覚える段階の、外村と同じ境遇にいる方にはもちろんおすすめですが、キャリアの長い方も、新人時代のあの瑞々しい気持ちを思い出させてくれる作品。

3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。

POINT1. 自分の強み・個性とは

主人公の外村はあまり自己主張をしないタイプ。これといった熱い気持ちや強い意志は感じられませんが、ひとつのことを真面目にコツコツと続けることができる人です。

第三者から見るとそういう強み・弱みってよく見えるものですが、当の本人はなかなか気づけなかったりするもの。

あなたも周りと自分を比較して「自分には何にもない」なんて悩んだことはありませんか?

同じように悩み、もがいている外村を通して客観的に自分を見つめ直すきっかけになるかもしれません。

POINT2. 風景が浮かぶ小説

小説を読んでいると、風景が浮かんでくることってありませんか?この小説はまさにそのタイプ。

まず、のっけの書き出しからこれです。

森の匂いがした。秋の、夜に近い時間の森。風が木々を揺らし、ざわざわと葉の鳴る音がする。夜になりかける時間の、森の匂い。
問題は、近くに森などないことだ。乾いた秋の匂いをかいだのに、薄闇が下りてくる気配まで感じたのに、僕は高校の体育館の隅に立っていた。放課後の、ひとけのない体育館に、ただの案内役の一生徒としてぽつんと立っていた。

『羊と鋼の森』宮下奈都著 文春文庫出版 (2018/2/10)より引用

私はこの美しい書き出しに一気に引き込まれてしまいました。

作中でも、調律している時の部屋の空気やピアノの音色まで聞こえてくるような描写がたくさんあるので、家にいながら美術館に行ったような気分が味わえる作品です。

忙しい毎日をほんのひととき忘れて、休日前に夜更かししながらベッドでひっそりと読みたい、そんな物語。

POINT3. それぞれの答え

本書では、主人公の外村をはじめとするさまざまなタイプの調律師が登場します。

才能に溢れるスタープレーヤーもいれば、コンサートチューナーと呼ばれる音楽ホールのピアノを調律するのが得意な人、対して普通の家庭のピアノを直すのがうまい人……などなど、ひとくちに調律師といっても弾く人や場所によって調律の仕方は変わるんだそう。

まだ駆け出しの外村は「どうしたら調律がうまくなれるのか」と先輩方に質問しますが、返ってくる答えはみんな違っていて余計に混乱してしまいます。

こんな経験、あなたにもないでしょうか。

納得できるわかりやすい答えがあればいいのですが、そうじゃない時もたくさんありますよね。

きっと先輩方もそれぞれに悩んで見つけ出した答えがあるはずで、その答えは人によって違うもの。

あなたにも共感できるタイプとそうでもないタイプの調律師が見つかるはずなので、人間関係に悩んでいる時、考え方が合わない同僚に悩んでいる時にぜひ手にとってみてください。

さまざまな調律師が、正解はひとつではないと教えてくれるはずです。

『羊と鋼の森』感想・まとめ

心の軸について考えるきっかけをくれる作品。

正解がないからこそ迷ってしまう時はたくさんありますが、どうせ正解がないのであれば自分の思うように直感で進んでみてもいいのかもしれません。

迷った時に読みたいお仕事小説。
ぜひ手にとってみてください。

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この記事を書いた人

これまでに何百冊もの小説を読んできました。その中から特に心に残った一冊を、少しずつ書評としてまとめています。

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