当記事は柚木麻子著『ランチのアッコちゃん』の書評です。
今回ご紹介する小説は、モヤモヤを抱えた人にぜひ読んでほしいお仕事小説。
このままでいいのか不安を感じている、一歩が踏み出せない。そんな時に背中を押してくれる作品です。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。
『ランチのアッコちゃん』あらすじ
地味な派遣社員の三智子は彼氏にフラれて落ち込み、食欲もなかった。そこへ雲の上の存在である黒川敦子部長、通称“アッコさん”から声がかかる。「一週間、ランチを取り替えっこしましょう」。気乗りがしない三智子だったが、アッコさんの不思議なランチコースを巡るうち、少しずつ変わっていく自分に気づく(表題作)。読むほどに心が弾んでくる魔法の四編。大人気の“ビタミン小説”をぜひご賞味ください。
『ランチのアッコちゃん』柚木麻子著 双葉文庫出版 (2015/2/14)より引用
全4話の短編からなる、働く大人たちを描いた物語。
彼氏にフラれた派遣社員、自分を偽ることに慣れてしまったOL、仕事一筋の社長……さまざまな「働く人」が登場しますが、みんなどこか不器用で、人生につまずいています。
ちょっとしたきっかけで、いつでも人生は変えられる。心に沁み入るヒューマンストーリー。
1話50ページ程度の読みきり型なので、一気に読む時間がなくても大丈夫。眠る前のほんのひとときにリフレッシュできちゃいます。
仕事に追われる毎日に少し疲れてしまった時、本書を手にとってみてください。自分を見つめ直すきっかけをくれるかもしれません。
『ランチのアッコちゃん』感想・レビュー
みんな不器用だなぁ。でも、気持ちわかるなぁ。と、共感しながらも苦笑してしまう。
なぜなら、この「不器用さんたち」は自分自身であり、彼ら、彼女らを通して自分を見ているような気恥ずかしさを感じたから。
自分に自信を持っていて、いつも100%素の自分が出せている。なんて、そんな人はきっといないでしょうから、不器用で上手く生きられない登場人物の中に、あなたも必ず共感できる人が見つかるはず。
それぞれがちょっとした出来事から気づきを得て、一歩踏み出すラストシーンは胸にグッときます。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。
POINT1. 30分でリフレッシュ
本書は1話50ページほどの中編小説4話からなる短編集です。お仕事小説で短編形式なのは、めずらしいのではないでしょうか。
仕事中心ではなく、働く人びとの人柄や心のうちに触れる内容ですので、堅苦しくなく読みやすいのもポイント。
それでいて登場人物1人1人のキャラがしっかり立っているので、思わず共感してしまうことも。
中でも、タイトルにもなっている「アッコちゃん」がいつも毅然としていて、かっこいいのなんの。2021年10月現在、3巻まで出ている人気シリーズとなっています。
悩んでしまった時、本書を手にとってみてください。「アッコちゃん」が背中を押してくれるかもしれません。
POINT2. 何が正解なのか?
このストーリーではさまざまな「働く人」が登場します。
バリキャリの女部長、結婚に焦るアラサーOL、だめだめな新入社員……仕事に対する価値観も立場もさまざまですが、みんな今の現状に不満を感じていて、どこかしっくりきていない様子。
あなたもきっと、そんな体験があるのではないでしょうか。
私も、自分のしたいことは本当にこれなのかな?と悩んでいた時期がありました。本書はそんな気分の時にピッタリ。
環境を変える者あり。考え方を改める者あり。
「正解」は人それぞれ違いますが、モヤモヤした気持ちを払拭する方法を示してくれます。考え方を少し変えるだけで、人生はいつでも変えられるんだな。と思わせてくれます。
なんとなく行き詰まってきた時、自分の気持ちがわからなくなってしまった時に、ぜひ読んでみてください。
POINT3. 美味しそうなご飯
本書には、頻繁に食べ物が登場します。
お仕事小説なのですが、食べることで人々が安らいでいく描写がよく登場しますので「食」はサブテーマだったりするのかな?と勝手に思っています。
手作り弁当、栄養満点のポトフ、屋上で飲むビール……最高じゃないですか?(笑)
仕事が忙しい時は、味わいもせずについつい簡単にすませてしまいがちですが、そういう時こそ心に余裕が必要なもの。
ストーリーを追っていくことで、自分の在り方を見つめ直すきっかけをくれるのはもちろんですが、次の休みにはゆっくり朝ごはんを食べよう。そんなふうに、心にも栄養をくれる1冊です。
『ランチのアッコちゃん』感想・まとめ
今回は、働く人々が登場する短編集をご紹介しました。
どこか不器用な登場人物を通して、いつのまにか凝り固まっていた自分の考えをほぐすきっかけになるかもしれません。
仕事に追われる毎日に少し疲れてしまった時、ぜひ手にとってみてください。