当記事は三谷幸喜著『清須会議』の書評です。
歴史、お好きですか?
私は正直、学生時代は苦手な教科でした。いまいち当事者意識が持てないというか、大昔のことすぎて本当にあった出来事なのかな?という感じ。
そんな私が、歴史に興味を持つようになったきっかけの小説をご紹介します。
正直あまり知識に自信はない、昔の言葉遣いだと内容が入ってこない。そんな方、ウェルカムです。
経緯もわかりやすく説明されていますし、言葉も現代語訳なので大丈夫。
舞台は、織田信長が本能寺の変で命を落とすところから始まります。
それでは、どうぞ。
『清須会議』あらすじ
信長亡きあと、清須城を舞台に、歴史を動かす心理戦が始まった。猪突猛進な柴田勝家、用意周到な羽柴秀吉。情と利の間で揺れる、丹羽長秀、池田恒興ら武将たち。愛憎を抱え、陰でじっと見守る、お市、寧、松姫ら女たち。キャスティング・ボードを握るのは誰なのか? 五日間の攻防を「現代語訳」で綴る、笑いとドラマに満ちた傑作時代小説。
『清須会議』三谷幸喜著 幻冬舎文庫出版 (2013/7/25)より引用
信長亡きあと、後継者を決めるための会議が清須城にて行われた。
その模様を脚本家の三谷幸喜さんが小説&映画化。およそ歴史小説とは思えないような超フランクな現代語訳が特徴で、ちゃんと史実に基づいた内容なのに、歴史小説のジャンルに入れるか迷ったほど。
話し合いの場では、表向きは全員スカしているのに、心のうちではドロッドロな腹の探り合いをしている心理描写がシュールで、笑いが止まりません。
マンガ感覚で気軽に手にとってみてください。
『清須会議』感想・レビュー
こんなに笑いが止まらない歴史小説は初めて。というか、他にないのでは?
著者の三谷幸喜さんは映画やドラマの脚本家としても知られていると思いますが、シュールな世界観を作るのが本当に上手で、緊迫した雰囲気が多いはずの歴史小説も三谷さんの手にかかると、こんなことになってしまうのか……と驚きました。
歴史小説特有の堅苦しさを徹底的に排除して、読みやすくしてあるので歴史に苦手意識がある方や、知識に自信のない方でも大丈夫。
むしろこれを読むことで、教科書だけではわからなかった背景まで知ることができます。
3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。
POINT1. 本当に歴史小説……?
本書の最大の特徴は、超超・フランクな現代語訳。
現代語訳って、なじみのない昔の言葉遣いを、現代の私たちが使っている言葉に置き換えることですが、三谷さんともなると「パフォーマンス」とか「キーパーソン」みたいなカタカナ語もばんばん入れてきます。
読みやすくて良いのですが、歴史小説だということを忘れてしまいそう(笑)
口語訳もとってもフランクで、物語は信長が本能寺の変で亡くなるシーンから始まるのですが、自害するシーンの緊張感のなさといったらひどいものです。
今、ちょっと腹の皮を切ってみた。あ、意外と痛い。お腹切るって結構、きついんだね。もうちょっといってみるか。あ、痛ててててて。痛てててて、痛ててててて。やっぱり死ぬのって大変だわ。
『清須会議』三谷幸喜著 幻冬舎文庫出版 (2013/7/25)より引用
絶対、こんなんじゃない(笑)
だけど、これで本書の読みやすさが伝わったかと思います。
POINT2. だけど、ちゃんと史実には基づいている
ですが、ただふざけているだけではありません。
本書はちゃんと史実に基づいているので、教科書では端折っていた部分や、どういう経緯で跡取りが決められたのかというところまでわかりやすく触れています。
歴史上、信長の亡き後には豊臣秀吉が権力者になっていますよね。でも、信長には3人息子がいたのです。
1人は信長と共に本能寺の変で命を落としているのですが、残る2人は健在でしたので、普通はこのどちらかが父を継ぐのが一般的なはず。
では、なぜ豊臣秀吉が権力を握ることができたのか?
このあたりの経緯が詳細に描かれていて、歴史が苦手な方でも頭に入ってきやすいかと思います。
POINT3. それぞれの視点で進むストーリー
本書は誰か1人の視点ではなく、後継者会議の舞台となった清須城にいる全員の視点で話が進みます。
ですので読者は、各々の人物が何を考えているのか「腹のうち」をすべて知ることができるのです。おもしろいですよね。
損得勘定による駆け引きや、それぞれの内情がわかることで経緯がよりわかりやすくなりますし、なんだかんだでみんな憎めないやつなので、きっと好きな人物が見つかるはず。
これをきっかけに、気になった人物について調べてみる。
そんな風に、歴史に興味をもつきっかけになるかもしれません。
『清須会議』感想・まとめ
今回は、爆笑まちがいなしの歴史小説をご紹介しました。
堅苦しいイメージがある方も、歴史小説を読んだことがない方でも大丈夫。肩肘張らずにかるーい気持ちで手にとってみてください。
楽しみながら歴史についても学べる、超フランクな歴史小説。
ぜひ、手にとってみてください。