当記事は小林聡美著『アロハ魂』の書評です。
今回ご紹介する作品は、ハワイの旅行記。
と言っても、水着を着てビーチでのんびり……という定番の過ごし方ではなく、火山を探索したり、グルメを堪能したり、ちょっと「通」な過ごし方をされています。
ですので、ハワイに行ったことがある方も、また一味違う楽しみ方ができるかと思います。
忙しくて海外旅行なんて行けない……そんなあなたも、週末におうちでアロハ気分に浸ってみてはいかがでしょうか。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。
『アロハ魂』あらすじ
マラサダ、フリフリチキン、カバ汁……ロコフードの洗礼。大豪邸の裏庭での幸せなフラ修行。火山でパワーチャージ。同い年のパワフルなガイド・クミコさん。剛毛マイケルのロミロミマッサージ。十二年ぶりに訪れたハワイ島で出会った、いろいろな“アロハ魂”。
さりげない発見と驚き、そして温かな笑いに満ちた、ハワイ島をめぐる旅エッセイ。『アロハ魂』小林聡美著 幻冬舎出版 (2013/2/10)より引用
女優の小林聡美さんが、ハワイ滞在中の思い出を日記形式で綴ったエッセイ。
映画『かもめ食堂』で主演をつとめられた女優さんです。
しかし、ただの日記と侮るなかれ。独特の着眼点と飾らないお人柄がにじみ出る痛快コメディのような内容に、ページを捲る手が止まりません。
起承転結もしっかりしていて、エッセイというよりも小説を読んでいるような満足感もポイントです。
ビーチでのんびり……といった定番の過ごし方ではなく、フラダンス体験や火山探索など少しめずらしい体験もされています。
ハワイに行ったことがない人はもちろんのこと、ある人でも新鮮な気持ちで読めるのではないでしょうか。
休日のおともに、ぜひどうぞ。
『アロハ魂』感想・レビュー
私は小林さんの出演されている映画を何作か見たことがあるのですが、凛としていて気風の良い役柄が多いイメージでした
エッセイを読んでみると、役柄のイメージそのままの飾らないお人柄。良いところだけではなく、失敗や後悔したエピソードも正直に描かれていてとても好感がもてました。
そして驚いたのが、読み物としての精度の高さ。ただただバカンスに行くのではなく、ハワイの歴史を事前にチェックされていて、その知識ありきの着眼点が、エッセイ全体に深みを出してくれている感じがありました。
3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。
POINT1. 一味ちがったハワイが楽しめる!
ご自身も冒頭で書かれていますが、THE・ハワイという定番の過ごし方ではなく、現地の食べ物にチャレンジしたり、火山に溶岩を見にいったり、一味違う過ごし方をされています。
例えば、滞在中にフラダンス体験をされているのですが、そもそもフラダンスは大きく分けて2種類あるのだそうです。私たちが「フラダンス」と認識しているあの踊りは、現地では「アウアナ」と呼ばれているのだとか。
みなさんご存知でしたか?私は今回はじめて知りました。これだけ定番となっている旅行地で、まだまだ知らないことがあるんだなと嬉しくなってしまいました。
いつか行くときの参考にもなりそうですね。
POINT2. 本当に行った気分になれる、うれしい写真付き
現地で撮影された写真もたくさん掲載されているので、本当に「行った気分」が味わえるのもポイントです。
海の写真ばかりでなく街の人々や、なんでもないありのままの日常風景も掲載されていて、その場に流れている空気感や匂いまで伝わってきそうな臨場感がありました。
滞在中には、日本では聞いたことのないような食べ物にも挑戦されているのですが、料理は言葉よりも写真の方が絶対に良いですよね。わかりやすいし、食欲も湧きますし(笑)
POINT3. 小説のような読みごたえ
読み終わってみて感じたのは、小説を読んだときのような満足感。いったい何がそうさせたのか。
まずは、話の起承転結がしっかりしているところ。
何をみてどう感じたのか、なぜそのように感じたのかがわかりやすく、1話1話のエピソードにきちんとオチがついているので「ハワイを旅行中の女優さんの物語」のように感じてしまったのかもしれません。
それから、知的欲求を満たしてくれるのも大きなポイント。事前にハワイの歴史なんかもリサーチされていたので、読んでいて「へぇー!」となるような豆知識や解説付きなのは嬉しいポイントでした。
『アロハ魂』感想・まとめ
日本人にとって身近な海外・ハワイ。
小林さんのフィルターを通してみると、まだまだ知らない楽しみ方がたくさんあるんだな。と気づかされました。
簡単に行くことはできませんが、週末におうちでパンケーキを食べながら、さざなみのBGMでもかけてアロハ気分に浸るのもいいかもしれません(笑)
ぜひ手にとってみてください。