当記事は角田光代著『今日もごちそうさまでした』の書評です。
「あれ、意外とおいしいじゃん。」
今まで苦手だったものが、ひょんなことから食べられるようになった。そんな経験はありますか?
今回ご紹介する『今日もごちそうさまでした』は、まさにそんな「おいしいじゃん。」なエピソードをたくさん集めたエッセイ。
美味しそうな料理の描写にお腹が空くこと間違いなし。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。
『今日もごちそうさまでした』とは?
『今日もごちそうさまでした』は、2011年アスペクトより出版された角田光代のエッセイ。
料理や食材にまつわる話ばかり集めた、小説家の描く絶品エピソードに注目です。
『今日もごちそうさまでした』あらすじ
「食べられない」から「食べる」に移行するときには、ダイナミックな感動がある(あとがきより)。自他共に認める肉好きのカクタさんに、食革命が起こった。なんと苦手だった野菜、きのこ、青魚、珍味類が食べられる! 次々出会う未知の食材は、買って作って味わう毎日を楽しい発見で彩ります。三度の食事に思いをこめて。読むほどに、次のごはんが待ち遠しくなる絶品エッセイ。
『今日もごちそうさまでした』角田光代著 新潮文庫出版 (2014/8/1)より引用
小説家・角田光代さんの「食」にまつわるエッセイ。
苦手な食べ物を克服していく過程に共感したり、思わずクスッと笑ってしまうエピソードが満載です。
角田さんの描く小説は心理描写が丁寧で、読了後も心に爪痕を残していくような、そんな作品が多いように感じます。
本作はエッセイなのに小説さながらの文章構成や、言葉のチョイスが印象的。
面白いのに、知的でハッとさせられる、作家さんの描いた文章を楽しむことができる贅沢な1冊だなと感じました。
休日の午後に、ソファに寝転がって読みたい。そんな作品。
『今日もごちそうさまでした』感想・レビュー
描き口が話口調なので、まるで友だち同士で「わかるわかる!」と盛り上がっているような楽しさがありました。
1食材=1記事なので、目次には食べ物の名前がズラリ。
ストーリーにつながりはないので、好きな食べ物から読むもよし。季節ごとにもまとめてあるので、読んでいる季節に合わせるもよし。
どのストーリーも、本当に「食」が好きなんだなという愛情が感じられてワクワクしてきますし、お腹が空いてきます(笑)
3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。
POINT1. 食べられるようになった「きっかけ」
このエッセイを読んで強く感じたのは、本当にこの記事で紹介している、ひとつひとつの食べ物・食材が好きなんだな。という著者・角田さんの食べ物への愛情。
なので少し意外だったのが、角田さんはもともとグルメだったわけではないということ。偏食で、むしろ苦手な食べ物の方が多かったそう。
それでも、いろいろなきっかけを経て食べられるものが少しずつ増えていくエピソードからは、今まで無理だと思っていたことが、ちょっとしたきっかけで案外するりとクリアできちゃうことってあるよね。というメッセージに感じられて、角田さんの考え方にハッとさせられるシーンが何度もありました。
そんな「なんでもないきっかけ」のお話が意外と為になったりして。
POINT2. 表現力
エッセイなのでさくさく読めるのですが、表現力、語彙力が多彩でさすが作家さんだなと。
まず目次をひらくと「ありが豚」「アボカドギャンブル」などなど……もう面白い。各話ごとのタイトルの付け方に強烈なセンスを感じます。
目次にこんなに気を取られるのはめずらしいのではないでしょうか。
ストーリーは1話4,5ページなので、すきま時間に読むのにオススメ。
ですが、目次もさることながら本文もさすがの表現力で、書き出しの一文が目に入ってしまうとついつい続きが気になってしまい、なかなかしおりが挟めませんのでご注意を。
POINT3. 旅先でのご当地グルメ
著者の角田さんは旅行もお好きなようで、旅先で食べたご当地グルメのエピソードも収録されています。
家にいながら旅行に行ったような気分が味わえるので、エピソードを読んで食べたくなったら買ってきて、食べながらもう1度読む……なんてエンドレスな楽しみ方もできちゃいますね。
描き口が、まるで居酒屋で友だちの話を聞くような気軽に読める文体なので、酒のアテの役目もはたせるかもしれません……(笑)
1話1話が短いので、カバンに忍ばせて旅行、移動中、出先で読むのにもぴったりです。
『今日もごちそうさまでした』の著者について
『今日もごちそうさまでした』の著者である角田光代さんは、日本の小説家、児童文学作家、翻訳家。
数々の文学賞を受賞しており、現在は選考委員を務める事も多い。
心の傷や悲しみの描写に定評があり、映画化されている作品も多数。
『今日もごちそうさまでした』感想・まとめ
今回は、文章も楽しめる作家さんのエッセイをご紹介しました。
苦手な食材がある人なら「あれ、意外とおいしいじゃん。」のきっかけに。好きな食材が載っていた人は「わかる、わかる!」と共感しながら読める、美味しいエッセイ。
休日のお供に、旅先で、ぜひ手にとってみてください。