当記事は片桐はいり著『グアテマラの弟』の書評です。
俳優・片桐はいりさんのエッセイです。
タイトル通り、グアテマラに住む弟さんを訪ねた時の体験談なのですが、あまりなじみのない国だったのでお国柄や文化など、このエッセイを通して初めて知ることばかり。楽しみながらグアテマラについて学ぶことができました。
なんと言っても片桐さんの文才が素晴らしく、文筆家としても充分通用するような文章力に、書き出しの一文で引き込まれてしまいました。普段あまり本を読まない方にもおすすめです。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。
『グアテマラの弟』あらすじ
グアテマラの古都・アンティグアに家と仕事と家族を見つけた年子の弟。ある夏、姉は十三年ぶりに弟一家を訪ねる旅に出た。まばゆい太陽とラテンの文化で、どんどん心身がほぐれていく。そして陽気に逞しく暮らす人たちと過ごすうち心に浮かんだのは、外国を知らずに逝った父、家事にあけくれ続ける母のことだった。旅と家族をめぐる名エッセイ。
『グアテマラの弟』片桐はいり著 幻冬舎文庫出版 (2011/2/10)より引用
ひょんなことから、グアテマラ在住の弟を訪ねることになった片桐さん。
現地で結婚し、グアテマラ人として暮らす弟一家と過ごしたひと夏の日々を綴った、エッセイ本です。
全く違う文化にカルチャーショックを感じながらも、時には謙虚に歩み寄り、時には面白おかしくネタにしてしまう片桐さんのユニークな語り口に、ページを捲る手がとまりません。
面白いエピソードばかりですが、社会情勢やグアテマラが抱える問題点など「外国人」である片桐さんの視点だからこそ見えてくる部分もあり、読み手側も考えさせられること、気づきがあります。
小説やフィクションもいいけれど、社会情勢やリアルな人々の暮らしについて考えるきっかけをくれた本でした。
ぜひ手にとってみてください。
『グアテマラの弟』感想・レビュー
好きな俳優さんのエッセイとあって即買いした私ですが、タイトルを見てまず思ったのが、「そもそも、グアテマラってどこにあるんだっけ……?」でした。あなたはご存知ですか?
答えは、メキシコのすぐ隣でした。主要産品はコーヒー豆・砂糖・バナナ。たしかにコーヒーの銘柄で聞いたことがありますよね。
それなのに、グアテマラの人たちは全然グアテマラ産のコーヒーを飲まない。というのにはちょっと驚きでした。そんな情報も、現地の人々と暮らしてみてこそわかること。
気軽に読めるのに、自分が普通だと思っていたことが覆されて右往左往する片桐さんを通して、読者はたくさんのカルチャーショックを受けることになります。
人の視野が広がるのはいつも自分の「常識」が覆された時なんだな、と読み終わってしみじみ感じました。
3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。
POINT1. グアテマラの人々のリアルな生活が垣間見える
旅行記なのですが、観光地を巡るというよりかは滞在中も弟家族の家で過ごしているので、グアテマラに暮らす人々のリアルな生活を感じることができます。
コーヒーの産地なのに、現地の人たちが飲んでいるのは私たち日本人が日頃飲んでいるコーヒーとは似ても似つかない「麦茶」のような味わいだとか。コーヒー豆はあくまで輸出用で、現地で流通しているのはどうやら品種も違うようです。
私たちが日本人なのに、日本茶ばかり飲んでいるわけではないのと似たような感覚でしょうか?観光地巡りだけでは見えてこない実情ですよね。
PONIT2. 考え方の違い・カルチャーショック
言語、食べ物、トイレ事情……ありとあらゆることが違うこの国で、すっかり暮らしに順応している弟さんとは対照的に、戸惑ってばかりいる片桐さんに同感しつつも、笑いが止まりませんでした。
それでも、彼の国の文化を楽しんで受け入れようとする片桐さんの「心持ち」が素敵で。ちょっとした失敗を内省して自分を見つめ直す姿勢なんかも、海外旅行記だからこそ気づける「日本人の良さ」を感じました。
特にトイレのエピソードは強烈です……!
POINT3. 家族の在り方について考えさせられる
現地で暮らす弟さん一家を目の当たりにし、日本の裏側で片桐さんが感じたのは「家族」の存在ではなかったでしょうか。
グアテマラへの一人旅のはずなのに、章の中ではご両親や弟さんとのエピソードがいくつも紹介されていて、旅を通じてご自身を見つめ直されているシーンが何度もあります。
肌の色が違う、言葉が通じない、それでも結婚して家族(親戚)になれる。地球の反対側にいても、インターネットを通していつでも連絡を取り合えるようになる。家族とはなんだろう?そんなことを考えさせてくれます。
『グアテマラの弟』感想・まとめ
私はこの本を読むまでグアテマラに関する知識は一切なかったので、面白おかしく読みながらも知識欲が満たされていくのを感じました。
グアテマラの人々の暮らしにほっこりしたり、時には社会情勢が垣間見えてギクッとしたり。旅行記以上のリアリティに満足すること間違いなしです。
いつもと少し違った読書体験がしたい方におすすめです。