当記事は『旅の断片』の書評です。
旅に出たい。どこか遠くへ行きたい。
今回は、そんな気分の時にぴったりな本をご紹介します。
『旅の断片』とは?
2020年に出版された『旅の断片』は、出版社である山と溪谷社の編集者であった若菜晃子さんが、プライベートで歩いた海外の街々で感じたことを綴ったエッセイ。
同年、旅がテーマの優れた著作に贈られる斎藤茂太賞を受賞。
同じシリーズに『街と山のあいだ』『途上の旅』『旅の彼方』がある。
『旅の断片』あらすじ

いつの頃からか、年に数度は時間をつくって海外を旅するようになった。旅先はなるべく行ったことのない国、あまり知られていない地域を選んで行く。
そうして旅に出ても、特別な目的をもって行動するわけではなく、また名所旧跡を丹念に見て回るわけでもない。大都市にも興味がない。
『旅の断片』若菜晃子著 アノニマ・スタジオ出版 (2019/12/12)より引用
本書は旅行エッセイなのですが、目的地は聞いたこともないような地方の町ばかり。
観光地でもないその町で過ごし、感じたことを断片的に綴った『旅の断片』。
情景が浮かび上がってくるような瑞々しい文章に、まるでその場所に滞在しているかのような気分にさせてくれます。
『旅の断片』感想・レビュー

人はなぜ旅に出るのでしょうか。
未知の体験をしてみたい、刺激が欲しいという欲求からでしょうか?それとも、忙しい日常から離れてのんびりしたいから?
人によって、さまざまな理由があると思いますが、このエッセイは、読了後に疲れた心が浄化されたような感覚がありました。
ガイドブックには載らないような町に滞在して、そこで暮らす人々の人生に思いを馳せる。
まるで一本のロードムービーを見終わったような充実感を感じました。
楽しみ方を、3つのポイントに絞ってお伝えします。
一生行くことのない街に行ける
コニストン、カコぺトリア、ホートンプレインズ、ヌメア──すべて都市や村の名前です。行ったことはあるでしょうか。
著者の若菜さんは、観光地よりもあまり知られていない都市を巡るのが好きなようで、本書には聞いたことのない町がたくさん登場します。
一生行くことのないであろうその町の雰囲気、人々、文化を若菜さんの目線を通して感じる時、本当にその場所にいるような、情景が浮かんでくる感覚がありました。
読書のいいところは、自身が体験するのは難しいことも疑似体験できる点にあると思います。
なかなか旅に出る時間がない、だけど日常から少し離れてリフレッシュしたい……そんな時におすすめのエッセイです。
どこから読んでもいい
本書は物語ではなくエッセイです。『旅の断片』というタイトルからも分かるとおり、それぞれの街で感じたことがランダムに綴られています。
ですので、最初から順番に読まなくても大丈夫。
目次と滞在国・都市名一覧がついているので、気になったタイトルから読むもよし。行ってみたい国から読んでいくもよしです。
1話2〜7ページで読み切れるので、寝る前に少しずつ読み進めることができます。
感情を揺さぶられずに読める
本を読みたいけれど、感情は揺さぶられたくない。悲しい気持ちにもなりたくない。そんな時におすすめしたい作品です。
フィクションや小説の場合、ストーリーを作るために起承転結が必要で、時にはネガティブな出来事も起きてしまいますよね。
ドキドキワクワクしながら読めたらいいのですが、気持ちが落ちている時や疲れている時はそんな刺激が辛い時もあります。
本書では刺激的な事件等は取り扱っていないので、穏やかな気持ちで安心して身を委ねることができます。
『旅の断片』の著書について
著者の若菜晃子さんは、山岳雑誌や自然、アウトドアに関する書籍を扱う山と渓谷社に入社。
編集者として働く傍ら、ご自身でも旅や自然に関する書籍を多数執筆され、現在はフリーランスとして執筆活動をされている。
『旅の断片』まとめ
今回は、旅行エッセイをご紹介しました。
忙しい日々の中でほんの束の間、知らない世界へ連れて行ってくれる作品です。
寝る前にページを開くと、1日の終わりのいいリフレッシュになりそうです。
ぜひ手に取ってみてください。