『極北の動物誌』感想・レビュー・あらすじ。ここではないどこかへ思いを馳せる

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当記事は『極北の動物誌』の書評です。

タイトルの通り、極北(カナダ)で生きる動物の一生に焦点を当てた1冊。

動物に関する書籍は数多くあれど、本書のようなスタイルは珍しいと感じたのでご紹介することにしました。

なかなか知る機会のない、動物たちの暮らしを“のぞき見”出来る作品です。

あなたにとって良き1冊となりますように。

『極北の動物誌』とは?

『極北の動物誌』は、1967年にアメリカで出版された。動物学者であるウィリアム・プルーイットが極寒地における動物の生態系を綴った1冊。

日本では写真家の星野道夫さんが自身の書籍で紹介したことをきっかけに、2002年に初めて邦訳された。(新潮社より出版)

その後絶版となり幻の名著として知られていたが、2021年にヤマケイ文庫より新たに文庫本として出版されている。

『極北の動物誌』あらすじ

カリブー、ムース、オオカミらが危ういバランスの上で織りなす極寒の地の生態系──。

『沈黙の春』が人類による自然破壊に警鐘を鳴らそうとした1960年代初め、アラスカの大地を核実験場開発の脅威から守り抜き、そのため故国アメリカを追われた動物学者がいた──ウィリアム・プルーイット。

極北の大自然と生命の営みを、詩情溢れる筆致で描き、自然写真家・星野道夫が遺作『ノーザンライツ』の中で、尊敬の念をこめて「アラスカの自然を詩のように書き上げた名作」と評した幻の古典、初の邦訳刊行。

『極北の動物誌』ウィリアム・プルーイット 著 岩本正恵 訳 新潮社出版 (2002/9/20)より引用

舞台はカナダのアラスカ。冬は気温がマイナス40度にもなる極寒の地なのですが、そんな厳しい土地にもちゃんと動物が暮らしています。

その動物たちの暮らしを、動物学者がまとめた本。そんな風にご紹介すると、学術書のような難しいものを想像する方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではなく、動物目線でそれぞれの暮らしを切り取ったドキュメンタリーのような作品です。

ナショナルジオグラフィックの文章バージョンというと分かりやすいでしょうか。

まるでその動物として生まれ、その地域で暮らしているような気分にさせてくれる表現力は圧巻です。

広大な大自然に放り出されたような没入感を味わえる1冊。

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『極北の動物誌』感想・レビュー

自分が暮らしている同じ地球上に、こんな別世界が広がっている。

読み終わってからも、生まれたばかりのハタネズミは“捕食者”に襲われずに生きのびただろうか、老いたカリブーは冬を越せたのだろうか……と映像が頭の中を巡るような、まるでその場所を見てきたかのような不思議な読書体験でした。

どのようにして動物たちの暮らしが成り立っているのか、分かりやすくまとめられていますし、何より表現が詩のように美しいので、うっとりと読み入ってしまいます。

ポイントを3つに絞ってお伝えします。

POINT1.動植物の生態系の成り立ちがわかる

本書は13の章からなる物語なのですが、一本の木のストーリーから始まり、ネズミ、オオヤマネコ、ムース(ヘラジカ)と、だんだん食物連鎖の大きいものに進んでいくので、生命がどのようにして循環していくのかが分かりやすい構成になっています。

当人たちは無自覚でも、全体を通してそれぞれの動物たちがお互いに影響しあって暮らしが成り立っているのがよく分かります。

知らなかった動物のことも知れますし、新しい扉を開いてくれる作品でした。

POINT2.動物としての目線

どの章もそれぞれの動物目線でストーリーが進むので、まるでその動物に生まれてきたかのような不思議な体験が出来ます。

本書の舞台であるアラスカは、冬はマイナス40度にもなる厳しい環境なのですが、そんな環境の中でも生き抜くために適応する逞しさ、生命の神秘には圧倒されました。

知らなかった動物たちのことを知るきっかけをくれた1冊です。

POINT3.環境保護について考えてみる

この本がアメリカで初めに刊行されたのは1967年のことでした。当時のアメリカはいわゆる開拓期で人々の暮らしを便利にするため、またはビジネス拡大のために土地開発が盛んに行われていた時期です。

しかし、この“開拓期”と呼ばれたたった数年で、何千年もかけて脈々と受け継がれてきた自然の営みが破壊されてしまうことに。

sdGsなんてもちろん提唱される前のことですが、著者であるウィリアム・プルーイットはこの頃から警鐘を鳴らしていたのです。

ストーリーの中でも、動物たちの暮らしが脅かされている様子が伝わってきました。

私たちにできることは何でしょうか。考えるきっかけをくれる作品です。

『極北の動物誌』の著者について

『極北の動物誌』の著者であるウィリアム・プルーイットは、1922年アメリカ出身の動物学者。

アラスカに核実験場開発計画が持ち上がった際に、環境に深刻な影響を与えることを提唱し、そのために職を失いアメリカを追われることとなった。

移住先のカナダでは大学教授として勤務する傍ら、環境保護に対する活動が認められ後にカナダ科学アカデミー最優秀賞など賞を多数受賞。

1993年、アラスカ州政府より正式の謝罪を受け、名誉回復。アラスカ大学名誉博士。

『極北の動物誌』まとめ

今回は『極北の動物誌』をご紹介しました。

小説とはまた違った切り口で、私たちを未知の世界へ連れて行ってくれます。

なかなか知ることの出来ない動物たちの世界を、ぜひ味わってみてください。

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