当記事は成田名璃子著『東京すみっこごはん』の書評です。
今回ご紹介する作品は寂しさを抱えた人たちが集まって、寄り添い合うヒューマンストーリー。
みんなでご飯を食べているシーンは、読んでいるこちらまでほっこりすること間違いなし。
料理のコツやちょっとしたポイントも載っているので、料理本としても役立ちます。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。
『東京すみっこごはん』あらすじ
商店街の脇道に佇む古ぼけた一軒屋は、年齢も職業も異なる人々が集い、手作りの料理を共に食べる”共同台所”だった。イジメに悩む女子高生、婚活に励むOL、人生を見失ったタイ人、妻への秘密を抱えたアラ還。ワケありの人々が巻き起こすドラマを通して明らかになる”すみっこごはん”の秘密とは⁉︎ 美味しい家庭料理と人々の温かな交流が心をときほぐす連作小説!
『東京すみっこごはん』成田名璃子著 光文社文庫出版 (2015/8/20)より引用
商店街の脇道に佇む古ぼけた一軒屋。看板には『共同台所すみっこごはん ※素人がつくるので、まずい時もあります。』
来たい人が来たい時にきて、くじであたりを引いた人がその日のごはんを作るというルール。
この謎の集いに、はじめはみんな戸惑います。ですが、年齢も職業もさまざまな人たちが集まって、ただただみんなでごはんを食べている時だけで、笑顔になれる。
それぞれ悩みや不安もあるけれど、ここでの交流に心がほぐれて明日からまた頑張ろう。とそれぞれの家路に着く……すみっこごはんは、そんな一風変わった「みんなの食卓」なのです。
全5巻のシリーズもので、毎回さまざまな事情をもった老若男女が登場するので、今悩みを抱えている方も背中を押してくれる1冊になるのではないでしょうか。
寂しい時に、心を温めてくれる連作短編集。
ぜひ手にとってみてください。
『東京すみっこごはん』感想・レビュー
読み終わった後に胸がジーンと熱くなる作品でした。
それぞれが孤独を抱えて集まってきているからこそ、人と人とのつながりや温かさが感じられて心のスキマを埋めてくれるようなストーリーが多かったです。
短編集なので1話完結型なのですが、連作になっているので最後に意外な事実が判明します。気軽に読めるようで、実は壮大なストーリーに驚きと感動が隠せません。
寂しい時、やりきれない時、あなたの心に寄りそってくれるエピソードが見つかりますように。
3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。
POINT1. 人の抱える孤独
本作は連作短編集で、章ごとに語り手が変わるのですが「すみっこごはん」に集まってくる人は、みんなどこか孤独や不安を抱えている人ばかり。
友人関係に悩む女子高生、結婚に焦るOLさん、喪失感を抱えたタイ人……。さまざまな人がさまざまな悩みを抱えています。そのエピソードにとてもリアリティがあって、ひょっとしたらあなた自身の人生とリンクする部分もあるかもしれません。
そんな「人の心の痛み」に寄り添ってくれるストーリーに、心が救われました。
POINT2. 料理のコツ
すみっこごはんに集まってくる人はいわゆる「ふつうの人」ばかりなので、なかには料理経験がない人も。なので、時には失敗作を振る舞うこともあって……このすみっこごはんの台所をきっかけに、腕をあげていく人もいます。
そんな素人同士の集まりなので、本当に家の台所のような日常感があって、今日から使えるちょっとした小技や料理のポイントが載っているのが嬉しいところ。
POINT3. 短編と長編のストーリー構成
連作短編集なので1話完結型なのですが、少しずつストーリーが繋がっているので、読み終わると意外な結末が待っています。
各話では、悩みを抱える人たちそれぞれの人間模様があり、どこにでもいるふつうの人びとの人生に共感できるストーリー構成となっているのですが、最後に明かされる真実で連作短編集の良さをグッと感じる事ができます。
伏線が回収されていく様にも注目です。
『東京すみっこごはん』感想・まとめ
今回は、ちょっぴり寂しさを感じた時に読みたい、そんな作品をご紹介しました。
ページをめくると、そこには孤独を抱えた「私たちのようなふつうの人びと」の物語があります。
いろいろあるけど、あったかいご飯を食べて明日からまた頑張ろう。そう思わせてくれるヒューマンストーリーです。
ぜひ手にとってみてください。