当記事はヘミングウェイ著『老人と海』の書評です。
ノーベル文学賞を受賞した、言わずと知れた名作。
世界中で愛されている作品ですが、どんな内容かご存知でしょうか。
130ページ足らずの短いストーリーなのですが、人生の中で大切にしたいことがたくさん詰まっていました。
『老人と海』とは?
『老人と海』は、アメリカ出身の小説家であるヘミングウェイによる小説。
1952年に出版されるとすぐに話題となり、500万部以上発行されたにもかかわらず48時間で完売したという逸話も残されているのだとか。
後にノーベル文学賞受賞。
『老人と海』あらすじ

八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだが——。自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。
『老人と海』ヘミングウェイ著 新潮文庫出版 (2020/7/1)より引用
老漁師と大物カジキの3日間に渡る死闘を描いたストーリー。
文庫本で130ページ足らずなので1日でよみきれます。
『老人と海』感想・レビュー

これは小説というよりかは、哲学書なのではないか——。
人の一生を凝縮したような1冊から、感じたのはそんな事でした。
小難しいのではなく、主人公である“老人”の生き様からたくさんの学びがあり、自分だったらどうするだろう?と考えさせられるシーンがたくさんあります。
20代、30代……と年齢を重ねるごとに感じ方も変わってくると思うので、手元において何度でも読み返したい1冊となりました。
3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。
老人の人柄
主人公の“老人”は漁師をしているのですが、84日間も不漁が続いてしまい収入がなく、非常に困窮しています。
一方で老人を慕う漁師の“少年”は、そんな老人のために食事を運んできたり、ビールをご馳走したり、何くれとなく世話を焼きたがります。
通常であれば、自分の孫ほどの年齢の子供から「施し」を受けることは、恥ずかしいと思うのではないでしょうか。
しかし老人は、素直に少年の好意を受け取ります。自分を卑下するでもなく、プライドを捨てるでもなく、素直に感謝して恵みを受けるのです。
この姿に老人の人間力を見ました。
自分がベストを尽くしてもどうにもならない時は、見栄やプライドを張るのではなく、素直に感謝して助けてもらう。とても大切なことを教えてもらいました。
うまくいかない時の心構え
ずっと不漁が続いているにもかかわらず、一向に気持ちが挫けていないところからして老人は強靭なメンタルであることが窺えます。
私だったら、自分の能力を疑って落ち込み、焦って判断を誤りそうなものです。
ですが“老人”は一向に焦る気配がありません。肝心のカジキが網にかかってからも、随分と長い時間を共に過ごします。
これはひとえに、長い人生経験の中で、焦っても仕方がないということをよく分かっているからなのではないでしょうか。
基本に立ち返り、状況を観察して今できることに粛々と取り組む。頭では分かっていても実際には出来ていない時もたくさんありますよね。
そんな時に、ぜひ読んでいただきたい1冊です。心構えのヒントが見つかるかもしれません。
臨場感のある心理描写
老人のとある3日間が描かれているのですが、登場人物は老人、少年、そして獲物であるカジキと大変少なく、会話もほとんどありません。
ですが、老人は実に“雄弁”なのです。海上で1人、孤独との闘いの中で時にはカジキに、飛来した鳥に、そして自分自身によく語りかけます。
その臨場感のある描写から、まるで自分自身が海上で過ごしているかのような気分になり、たった130ページとは思えない読み応えを感じました。
普段ゆっくり本を読む時間がない方でも、1日で読み切れて没入感も味わえます。
『老人と海』の著者について
『老人と海』の著者であるヘミングウェイは、アメリカ・シカゴ生まれの作家。
作家として活動し、短編、長編問わず多数の小説を執筆している。
日本語に翻訳された作品の中で代表的なものは『日はまた昇る』『誰がために鐘は鳴る』などがあり『老人と海』は生前最後の作品となった。
『老人と海』感想・まとめ
今回は、名作『老人と海』をご紹介しました。
世界中で愛されているだけあり、人生で大切にしたいことが詰まった作品でした。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。