当記事は、宮沢賢治著『注文の多い料理店』の書評です。
児童文学と位置づけられる作品が多く、国語の教科書で読んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。
ですが、今回はあえて大人のあなたへおすすめしたいのです。
大人になってから読み返すことで当時とはまた違った印象を受けますし、そこに気づきや発見があれば何よりです。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。
『注文の多い料理店』あらすじ
表題作の『注文の多い料理店』をはじめ、19編の童話が収録されています。
4〜10ページ程度のショートストーリーもあるので、時間がなくても少しずつ読み進められるのが嬉しいところ。
内容も、子供向けと侮るなかれ。大人の私たちもハッとさせられるような言葉や教訓がたくさん詰まっています。
普段現代小説を読んでいる方は、いつもと違う作風に触れることで価値観が変わったり、別の視点を持つきっかけがもらえるかもしれません。
ぜひ手にとってみてください。
『注文の多い料理店』感想・レビュー
ページを捲るたび、脳裏に美しい田園風景が広がる。そんな作品でした。
宮沢賢治は出身地である岩手県で農業高校の教諭をしていたこともあり、本書に収録されているストーリーのほとんどが農村部を舞台に描かれています。
キツネや猿が喋るといったファンタジー要素もあるのですが、なかには風刺が効いていてハッとさせられるような内容も。
読む年代によって感じ方や読み取れる内容も変わってくると思うので、子供の頃に読んだことがある方も、改めて読み返すとまた違った読み解き方ができるかもしれません。
3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。
POINT1. 美しい描写
自身の出身地である岩手県を舞台に描かれた作品が多く、地名や川の名前なんかも度々登場します。
美しい雪景色や田園風景は情景が頭に浮かんでくるようで、読んでいるだけで癒されます。
便利な世の中になった今だからこそ、たまにはデジタルな日常から離れて美しい自然の中で過ごすような体験はいかがでしょうか。
忙しくて旅行に行く時間が持てなくても大丈夫。本を開けば、自宅にいながら美しい世界に触れることができます。
POINT2. 独特な表現に注目
宮沢賢治の作品の特徴といえば、その個性的な言葉選びではないでしょうか。
1920年代に描かれた作品ですが、ワードセンスや表現が独特です。
わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
『注文の多い料理店』宮沢賢治著 新潮文庫出版 (1990/5/25)より引用
これは作者のまえがきなのですが、素敵な表現だと思いませんか?
こういう素敵な表現のなかに、ハッとさせられるような確信をついた一言が忍ばせてあったりするので、好きな表現を探してみるのもいいかもしれません。
POINT3. 風刺を読み取る
本書が児童文学に分類されている理由。それは、カラスや岩が喋るというファンタジックな内容にあるかと思います。
ですが、子供向けと侮るなかれ。風刺が効いたストーリーや、動物目線で描かれた人間の身勝手さを揶揄するようなストーリーなど、ハッとさせられる描写がたくさん出てきます。
大人になった今だからこそ読み取れる解釈も多く、子供の頃とはまた違った楽しみ方ができるはず。
『注文の多い料理店』感想・まとめ
今回は、宮沢賢治の名作『注文の多い料理店』をご紹介しました。
現代小説とは一味違った近代文学から人生に大切なこと、教訓を学ぶのもいいかもしれません。
ぜひ手にとってみてください。