当記事は池井戸潤著『下町ロケット』の書評です。
今回ご紹介する小説は、熱い男たちのプライドをかけたお仕事小説。
困難な局面でも信念を持って取り組む姿に、胸を打たれること間違いなし。
今の自分の仕事に自信が持てない方、疑問を持っている方は自分を見つめ直すきっかけがもらえるかもしれません。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。
『下町ロケット』あらすじ
研究者の道をあきらめ、家業の町工場・佃製作所を継いだ佃航平は、製品開発で業績を伸ばしていた。そんなある日、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられる。圧倒的な形勢不利の中で取引先を失い、資金繰りに窮する佃製作所。創業以来のピンチに、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、佃製作所が有するある部品の特許技術に食指を伸ばしてきた。特許を売れば窮地を脱することができる。だが、その技術には、佃の夢が詰まっていた——。男たちの矜持が激突する感動のエンターテインメント長編!
『下町ロケット』池井戸潤著 小学館文庫出版 (2013/12/26)より引用
ロケットの部品を作っている佃製作所。決して大きくない町工場ですが、手を抜かない仕事ぶりと高い技術で業界内でも高い評価を得ています。
そんな時、突然降って沸いた訴訟。内容は理不尽なものなのに「訴えられた会社」という噂が広まってしまい、会社はたちまちピンチに……。
経営者として何とか立て直しを図る佃社長と、従業員たちのプライドをかけた戦いが始まる。
利益を取るか、夢を取るか。思い悩むサラリーマンの姿に共感を覚える人も多いのではないでしょうか。
仕事への情熱、向き合い方を改めて考えさせられるお仕事小説。
ぜひ手に取ってみてください。
『下町ロケット』感想・レビュー
胸が熱い。目頭も熱い。とにかくあつい。池井戸潤さんの描く男たちは、いつも泥臭くてかっこいい。
作者の池井戸潤さんはお仕事小説を数多く執筆されており、あの社会現象にもなったドラマ・半沢直樹シリーズの生みの親でもあります。
今回は町工場が舞台となっていますが、会社の実態や中で働く人々の描写が丁寧で、日本のどこかに本当にこんな会社がありそうだな、と想像しながら読めました。
真剣に仕事に取り組む姿勢、夢を追いかける姿はたとえフィクションでも痺れますね。
何のために頑張っているのか分からなくなってしまった時に読み返したい作品です。
3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。
POINT1. リアリティのあるストーリー
池井戸潤さんの作品の最大の特徴は、とことんリアリティを感じさせてくれるという点。
フィクションなのに、本当にどこかにこんな会社、社員がいそうだなと思わせてくれるのは、職業への理解が非常に深いこととキャラクター設定が要因ではないでしょうか。
本書ではロケットの部品をつくる町工場が舞台となっていますが、部品の性能や製作過程に至るまでしっかり調べられているのがわかります。
一人ひとりのキャラクターも個性が立っていて、本当にこういう人いるよなぁ。と思わず共感してしまう人物ばかり。あなたもきっと、好きな登場人物が見つかるはず。
まるで「情熱大陸」のような、熱い男たちのストーリーに痺れること間違いなしです。
POINT2. やりたい事を叶える方法
好きな事がしたい、夢を追いかけたい。だけど夢だけでは生きていけない。
働いている人なら、一度は直面したことのある悩みではないでしょうか。
本書の主人公・佃航平もそんな現実と戦っています。しかも社長という立場で。
会社と社員を守らなくてないけない責任ある立場でありながら、佃社長はかつて夢破れた経験があり、その夢も捨てられないという狭間で思い悩みます。
もしあなたが、今の仕事に疑問を感じている、好きな事がしたいと悩んでいるのであれば本書を手に取ってみてください。
やりたい事を叶える方法はひとつではないと、佃製作所のメンバーが教えてくれます。
POINT3. 仕事への向き合い方
安定、刺激、地位、名声……仕事に求めるものは人それぞれかと思いますが、あなたは何を重視していますか?
これは、本書を通して作者から問いかけられたテーマのように感じました。
ただ与えられた事をこなすだけではなく、どうしたらもっと良くなるのかを考えながら取り組む佃製作所のメンバーは皆いきいきとしていて、気持ちの良い仕事っぷりに感心してしまいました。
はじめは投げやりだった人や溝のあったメンバーが、少しづつ団結していく様子は涙なしには読めません。
結局人を突き動かすのは「人の想い」なんだなと思い知らされました。
仕事をしている人なら、必ずハッとさせられるシーンがあるはず。自分に重ね合わせて救われるも良し、内省するもよしです。
『下町ロケット』感想・まとめ
今回は、男たちの熱い仕事っぷりに痺れる小説をご紹介しました。
仕事への向き合い方は人それぞれですが、より良い方を目指してコツコツ頑張ることで彼らのように努力が身を結ぶ日が来るかもしれません。
何のために頑張っているのかわからなくなってしまった時、立ち止まって考えたい時におすすめの1冊です。
ぜひ手に取ってみてください。