当記事は原田マハ著『総理の夫』の書評です。
今回ご紹介する小説は、なんと日本初の女性総理が誕生するところからスタートします。
損得勘定や妬み・やっかみからさまざまな問題が持ち上がるのですが、ブレずに突き進む姿がカッコいいのなんの。
誰とでも対等に、真正面から向き合う総理の姿勢にはハッとさせられるものがありました。
人間関係に悩んだ時、あなたの背中を押してくれる一冊になるかもしれません。
『総理の夫』とは?
『総理の夫』は、2013年に実業之日本社より出版されたお仕事小説。
日本初の女性総理大臣の奮闘を、夫目線で描いたストーリー。
中谷美紀・田中圭主演で、映画化もされている。
『総理の夫』あらすじ
20XX年、相馬凛子は42歳の若さで第111代総理大臣に選出された。鳥類学者の夫・日和は、「ファースト・ジェントルマン」として妻を支えることを決意。妻の奮闘の日々を、後世に遺すべく日記に綴る。税制、原発、社会福祉。混迷の状況下、相馬内閣は高く支持されるが、陰謀を企てる者が現れ……。凛子の理想は実現するのか?感動の政界エンタメ!
『総理の夫』原田マハ著 実業之日本社文庫出版 (2016/12/15)より引用
物語は、女性初の総理大臣が誕生するところから始まります。
ストーリーテラーはタイトルの通り、総理大臣の旦那さん。
日本初の女性総理が誕生したということで、日本初の「総理の夫」となった旦那さん目線で綴る夫婦の奮闘記。
ありそうでなかった設定ですよね。女性の社会進出が叫ばれている今日、女性政治家は増えてきましたが、総理大臣になったことがあるのはまだ男性のみ。
次々と持ち上がる問題・陰謀・駆け引き……夫婦は試練の数々を乗り越えることができるのか?人と人との絆に、心温まるストーリー。
著者の原田マハさんの描くお仕事小説でもう1冊、ご紹介したいのが『本日は、お日柄もよく』。
こちらはスピーチライターという職業にスポットライトが当たっていて、本書ともリンクする人物が登場します。時系列でいうと『本日は、お日柄もよく』を先に読むのがオススメ。
『総理の夫』感想・レビュー
信念を持って努力する姿勢は、人の気持ちも動かせるんだな。と胸が熱くなりました。
仕事をする上で「こうしたいんだ」という意思のようなものって大事だと思うんですが、周りとのバランスや立場など、制約があってなかなか理想通りにはいかないもの。
女性初の総理となった「凛子」もさまざまなしがらみに苦労させられますが、それでも挫けずに信念を貫き通す姿にはしびれました。
もしあなたが今、ままならない日常を過ごされているのであれば「凛子」の考え方・姿勢にヒントをもらえるかもしれません。
仕事のモチベーションが下がってしまった時、このままでいいのか悩んでいる時にぜひ読んでいただきたい作品です。
3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。
POINT1. 女性の社会進出問題
本書では女性の社会進出問題を取り上げています。
妊娠出産によるキャリア中断の壁、周囲からの無理解、パートナーとの認識の差……女性が仕事を続けるには、これだけたくさんの問題があるのだなとしみじみ感じました。
産休育休の認知度が上がり、男性でも育休が取れるようになってきたりと以前よりかは進歩しているようですが、まだまだ過渡期で整備されているとは言えませんよね。
きっとあなたやあなたの周りにも、この問題に直面している方はいるはず。
日本でもいつか本当に女性総理が誕生して、働きたい人が思う存分力を発揮できる社会になったら最高ですね。
本書を機に、「自分が凛子の立場だったら」とこの問題と向き合うのも良いかもしれません。
POINT2. 日記形式で読みやすい
ストーリーはタイトルの通り、総理の夫である「日和くん」の日記形式で進みます。この形式が、本書をグッと読みやすくしているポイントであると私は思います。
政治に関するストーリーと聞くとお堅いイメージがあるかと思いますが、主人公である「日和くん」は政治家でもなんでもない一般の人。
増税・少子高齢化など、日本が抱える問題も取り上げているのですが、一般人のフィルターを通すことによってお堅いイメージが一掃され、とても読みやすかったです。
400ページを超える長編ですが、政治にあまり興味がない方でも抵抗なくスラスラ読めてしまうはず。
日記から感じられる、総理となった妻への想いにも注目です。
POINT3. やり通すことのむずかしさ
あなたは何かひとつの事を、信念を持ってやり通した経験ってありますか?
こんなふうに聞かれたら尻込みしてしまうのが普通ですよね。それくらい、最後までやり通すのってむずかしいこと。
自分の思いだけではどうにもならない局面もありますし、気持ちがブレてしまう時も。このむずかしさを知っているからこそ、信念を持っている人には憧れてしまいますよね。
総理になった「凛子」は、まさに信念の人。
たくさんの困難が訪れますが、強い気持ちで進む姿に「もし本当にこんな人がいたら、私も絶対投票するな」とファンになってしまいました。
なかなか凛子のようにはなれませんが、壁にぶち当たった時、悩んでいる時はヒントがもらえるかもしれません。
『総理の夫』の著者について
『総理の夫』の著者である原田マハさんは、小説家になる前からキュレーター(※)という職業に就かれている珍しい経歴の持ち主。
海外在住経験を活かした題材も多く、映画化・ドラマ化された作品も多数。人情味のあるストーリーが持ち味。
※博物館、図書館、美術館などにおいて、展示する資料や作品の管理、鑑定を行専門管理職。
『総理の夫』感想・まとめ
今回は、カッコいい女性が活躍するお仕事小説をご紹介しました。
なかなか「凛子」のようにはいきませんが、お仕事で悩んでいる方はぜひ、本書を手にとってみてください。
自分を奮い立たせてくれるバイブルになるかもしれません。