当記事は、村上春樹著『ノルウェイの森』の書評です。
なんだか疲れてしまった……そんな時は無理をせず、心を休めるのが1番。
読書好きの私も、その時々の精神状態によって選ぶ本のジャンルが変わってくる気がします。
今回は、疲れたあなたの心に沁みる「生きるとは?」を、問うてくる作品をご紹介します。
読み終わる頃には、心がスッキリと浄化されていることでしょう。
あなたにとっての、良き一冊となりますように。
『ノルウェイの森』とは
『ノルウェイの森』は、1987年に講談社より発行された村上春樹の文学小説。
日本国内の小説累計発行部数で歴代1位とも言われている彼の代表作。上下巻合わせて1000万部を突破し、今も記録を伸ばし続けています。
『ノルウェイの森』あらすじ
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。
『ノルウェイの森』村上春樹著 講談社文庫出版 (2004/9/15)より引用
僕は一九六九年、もうすぐ二十歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
友人の「キズキ」の死。若いうちに友人を亡くし、心に傷を負ってしまった主人公と直子。
「死」に取り憑かれ、心のバランスを崩していく直子と、それを支えたいと願いながら変化していく自分を許せない主人公の、ピュアで瑞々しい「生き様」を描いた作品。
生きるとは?死とは?人間について考えさせられる1冊。
『ノルウェイの森』感想・レビュー
主人公は大学生なのですが、まだ大人になりきれていない不安定な心の描写に甘酸っぱさを感じました。
一方で、死生観について考えることで普段踏み込むことのない、心の深い部分まで意識が下りていく感覚もあり、決して明るい内容ではないにもかかわらず、読了後はなぜかスッキリとした気持ちに。
疲れている時や煮詰まっている時に読むと、心のデトックスになるかもしれません。
3つのポイントに整理して、本の感想をお伝えします。
POINT1. 美しい文章に触れる
読んでいて感じたのは、文章の美しさ。
「死」という重たいテーマを取り上げ、しかも上下2巻の長編にもかかわらず不思議とスラスラ読めてしまいます。
会話も風景描写もテンポが良くて、どのシーンも情景がスッと脳裏に浮かんでくるよう。
物語の続きを読むというよりかは、もはや文章そのものを楽しみたくて読んでいるような感覚です。
村上さんの作品が、世界中で人気な理由がわかるような気がしました。
読書が好きな方であれば、普段どんなジャンルを読む方にもおすすめできる作品だと感じました。
POINT2. 時代背景から見る、人と人との距離感
物語の舞台は1969年。大学紛争がちょうどピークに盛んで、学生たちがストライキを起こしたり校内に立てこもったりしていた時代。
もちろんパソコンやスマートフォンなんて代物はなく、気になる女の子には家に電話をかけるか手紙でアプローチしていた、そんな時代です。
そんな時代の物語を読んで感じたのは、スマホひとつで連絡が取れる現代よりも、むしろ当時の方が気持ちのやりとりが出来ていたのではないか、ということ。
会えない時間に他者を想い、ゆっくりと関係性を築いていく。
そんな関係性ってなんだか良いなと思いました。
人との距離感に悩んだ時、自分を見つめ直したい時に読むとヒントがもらえるかもしれません。
POINT3. 生・死・愛を考える
友人の「キズキ」の死をきっかけに心に傷を負ってしまった2人は、共鳴し合いながらもどこか歪んでしまった自身の気持ちを処理できずにいます。
生とは?死とは?を問い続けるなかで、惹かれあっていく2人の気持ちは、寂しさを埋めたいだけなのか、愛情なのか。
若いころ特有の真っ直ぐで不器用な感情が瑞々しく伝わってきます。
生きるとはなにかを考えさせられる1冊でした。
『ノルウェイの森』の著者について
『ノルウェイの森』の著者である村上春樹さんは、日本を代表する小説家です。読書好きな方なら、一度は読んだことがあるのではないでしょうか。
読みやすい文体であるにも関わらず、テーマが壮大で、読了後も人によって解釈が分かれることもしばしば。
この記事は「純文学」にカテゴライズしているのですが、彼の紡ぎ出すストーリーはジャンル分けが難しいことでも知られています。
ご本人もジャンルを超えた「総合小説」を描きたいと発言されているように、どのジャンルにも当てはまらない独特の作風にファンも多く、彼のファンには「ハルキスト」という名称もついています。
『ノルウェイの森』感想・まとめ
今回は、村上春樹さんの作品をご紹介しました。
疲れている時やリフレッシュしたい時、彼の紡ぎ出す美しい文章に触れることで心のデトックスになるかもしれません。
ベッドサイドの灯だけにした静かな部屋で読んでいただきたい、そんな作品です。
ぜひ手にとってみてください。